6.
その他、安全運航の確保のために必要と認められる事項
(1) 長・中距離フェリー
イ. (青森〜函館)
錨はダウンホース型(1トン)、錨索(SUS 33.5Φ×195m)を装備しているが、本船就航後投錨実績が無いと言う。最終便後の岸壁係留時を利用して投錨および揚錨作業を実施し、ウインドラス、錨およびチェーンワイヤーの状況を確認する必要がある。また、非常時に備え定期的な各駆動部のグリースアップ等の整備も必要である。なお、同作業は短時間でできるはずである。
ロ. (大阪南港〜新門司)
安全運航の原点は見張りにあることは言うまでもないが、本船は両ウイング・レピーターコンパスにもシャドウピンが立てられ、視覚(肉眼)による見張りの重要性に重点がおかれていた。船橋内にモットー「安全の誓い」が掲示されていた。このモットーを社是として安全運航に努めて貰いたいものである。
ハ. (呉〜広島〜別府)
本船と救助艇間の連絡方法として(船橋掲示物および運航管理規程)
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直進 |
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後進 |
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右転 |
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左転 |
手旗信号 |
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紅白真上 |
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紅白真下 |
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白真上 |
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紅真下 |
信号灯 |
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白灯標示 |
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白灯長三符 |
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白灯長一符 |
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白灯長一符 |
なっている。信号灯では右転と左転が同じになっている。単純な記載ミスと思われる。再確認し、救助艇に同じ物があるはずであり、これも確認しておくこととした。
ニ. (鹿児島〜屋久島)
鹿児島港における岸壁エプロン上でのコンテナ作業と旅客の誘導路との関係
鹿児島港では、岸壁エプロンがコンテナ作業用と旅客誘導通路用とに共用されている。フェリー着岸時での使い分けが話し合われているとのことであるが、本船の着岸時に大型トラックが旋回したり、通路として利用されている様子が多々見受けられた。誘導通路内にいる旅客にとって非常に危険である。旅客が乗下船するわずかな時間でも、船客待合室通路端から本船舷梯付近まで、何らかのバリケードを張る必要がある。
係船ウインチの操作レバーの塗色について
船首・船尾にある係船ウインチの操作レバーが、黒一色であった。操作レバーのハンドリングミスを防止するため、右舷・左舷・中央とそれぞれ色分けした塗色をすべきである。往航で指示したところ、復航では色テープを巻いてそれぞれの操作レバーを色分けしていた。また、元々色分けしてあったがペイントが古くなり黒くなってしまったとのことである。その様にならないよう普段から細部にわたって、点検整備をしていただきたい。
本船は、一般小荷物も運送しているが、甲板部、事務部、船橋では取扱い・積み込み個数のみを確認表示していた。安全運航の維持のためには、小荷物の個数のみではなく、それらを入れたコンテナ個数を把握しておくことが重要である。往航で指摘したところ、直ちにコンテナ個数を併記して船橋のホワイトボードへ表示するように修正された。
車両甲板作業者の服装について
安全帽、安全靴、そして所定の作業服を着用し、乗組員の執務状況は極めて良好である。さらに乗組員の安全作業を遂行するうえで、車両甲板における車両の誘導に際し、赤色閃光式のたすきを着用し、同様の誘導灯を携行することにより、車両誘導時に発生することが予想される圧死事故の防止対策を提言したい。(乗組員との懇談会にて、早急に手配する旨の発言が船長からあった。)
両舷錨は、出港部署を開くと直ぐにチェーンストッパーがかけられている点は、波浪の衝撃を予防する対策として必要である。しかし、入港時、着岸舷のチェーンストッパーは、そのままの状態であるため、何らかの事由によって投錨する必要が生じた場合には間に合わない。入港直前に機関後進を確認する作業が行われているとはいうものの、前進抑制の最終的な手段は投錨である。入出港時、両舷錨をスタンバイすることは船舶運用上の基本である。
就航以来第二回目の定期検査を終え、初期故障もほぼ出尽くした時期である。運航の完熟期を迎え、機器、設備の老朽化に伴う経年故障が見られる時期を前に、定期的な巡検とは別な観点からの点検が必要である。救命設備、消防設備に限らず、船体・機関を問わず総合的な見地から日頃使用しないところを重点的にチェックする体制の整備が望まれる。幸い本船には、経験豊富な船長と機関長が乗船しており、慣れと油断防止対策を踏まえたチェック体制が早急にとられるものと確信している。
本船は、船体構造上、常時舷梯が振り出された状態で航行している。離着岸時の舷梯作業は、事務部が所掌しているため、事務長が安全監視員となり、事務部員に作業用救命胴衣を着用させて、舷梯作業が行われている。安全第一を基本姿勢とし、予め定められた作業マニュアルに基づいて確実に作業が行われており、今後ともそのような作業姿勢を継続していただきたい。
ホ. (川崎〜宮崎)
可動橋の収納確認は報告のみである。チェックリスト等での確認はなされていないようであった。宮崎港はターニングベーシンが狭いためもあり、入港時にはタグボートを1隻使用した。緊急時に備え常時待機とのことであった。