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<検討事項>

イ. (呉〜広島〜別府)

 救命筏(ライフラフト)について:乗客の乗艇すべき救命筏番号は細かく決められている。筏は両舷に各2縦列に配備されているが番号は外舷側に表記されていて退船時に甲板上に集合した乗客からは自分が乗るべき筏の番号が読めないのではないか。言い換えれば、乗客は自分の乗る筏がどこにあるのか分からないのではないか、また、投下される筏は2個づつ落下するが、乗客が定員より大幅に少ない場合は乗るべき乗客がない筏も投下されることが有り得る。このような場合、乗客の混乱を防ぐためには、乗組員が乗客を現場で仕分けして乗艇可能なものから順に乗客を誘導する必要に迫られる事態も考えられる。満船に近い場合は、全乗客が指定番号の筏に乗艇するが、逆に乗客が非常に少ない場合の対応をも検討しておくと良い。「非常時における旅客が乗艇する救命筏」によると、右舷側に?3〜?16、14個、左舷側に?20〜?35、16個、合計30個の救命筏に対し、客室番号により何番の救命筏に乗るかを定めてある。各客室に乗るべき救命筏の番号と場所を明記するか、大部屋以外の部屋のキータブ等には救命筏の番号を付記しておくと緊急時に大勢の乗客を誘導するのには効果があるのではないかと思われる。
現在位置の表示について:要所要所に船体配置図が掲示されているが、乗客にとって現在自分の居場所が何処かが分かり難い。図中に小さなマークが貼ってあるが見えにくい。新造の際には、できる限り見やすい表示にするよう望まれる。また、船体図面は一般に左が船尾になっているが、これを掲示した時、図面の船首方向と実際の船首方向が逆になることがある。(南を上にした地図を掲示することと類似している。)咄嗟の場合、船に不慣れな乗客は、自分はこの図面の船首方向に行けば、本船の船首に行き着くと錯覚しないか気がかりである。

ロ. (鹿児島〜屋久島)

 船内・外にある非常脱出経路を示す矢印が、小さくかつほぼ目の高さに表示されている。煙による視認困難性を少しでも和らげるため、1回り大きい矢印を側壁下部に表示すべきである。塗料も摩耗しているので、新替えの時期と思われる。
 船内各所に表示されている非常警報信号の表示パネルが非常に小さく、真側まで行かなければ、全てが読めない状況である。面積で6倍程度の大きさのものにする必要がある。また、"長音5回"という信号に対して、○非常信号と○火災警報という2つの意味が規定されている。1つの信号には、1つの意味とすべきである。
エントランス・ホールの階段上に旅客が立つのは危険であるので、注意していただきたい。旅客への周知と理解は、根気よく何度も何度も繰り返し注意することにより得られるものである。
 就航以来5年が経過し、暴露甲板に備え付けられている鋼製消火ホース格納箱の腐食が目立っている。寒暖乾湿の暴露甲板にあっては、鋼製の装置・設備の腐食は避けられない状況である。そこで、そのような環境にあっても腐食しないベークライト製の格納箱に更新することを検討していただきたい。
救命浮環(life buoy)に取り付けられるオレンジ色の浮揚性救命索について
 緊急時に、直ちに救命浮環を投下できる状態ではない。その救命索は、一見きれいに巻いてあるようであるが、非常事態を想定すると、投下までに暫く時間を必要とする状態で格納されている。短時間で、スムーズに投下できるような工夫が必要である。

ハ. (東京→父島)

 案内所付近に救命胴衣(見本)を展示して折りにふれて旅客に着用法を指導する等すれば有効と思われる。D甲板の脱出口は、開放の可否については船長の判断が必要であり、また、開放作業にはかなりの熟練を要するから担当者に対する日頃の指導訓練が特に重要であると思われる。

ニ. (川崎〜宮崎)

 救命胴衣着用法は船室に掲示されているが、乗船時、受付横のテレビで放映してはと考える。脱出経路を示す矢印の掲示位置の高さが異なる。通路に煙が充満することを考えると低い位置に統一したほうがベターではないかと思われる。

 

 

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