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(2) 短距離フェリー

イ. (泊〜阿嘉〜座間味)

 装備されている主な航海計器は、磁気コンパス、デイライトレーダー、簡易ECDIS(船位プロッター付GPS)である。簡易ECDISは、昨年末に発生した乗揚げ事故後に設置したとのことである。当日は、視界が良かったので、レーダーおよび双眼鏡は使用されていなかったが、簡易ECDIS は有効に活用されていた。船位の確認が簡易ECDISを用いて頻繁に行われていたことは、昨年末に発生した乗揚げ海難の反省も含め、今後とも継続して実施していただきたい点である。

ロ. (泊〜真泊〜渡名喜)

 装備されている主な航海計器は、磁気コンパス、デイライトレーダー、簡易ECDIS(船位プロッター付GPS)である。当日は、梅雨前線が活発で時折激しい驟雨により視界制限状態となり、レーダーで物標が探知できない状況もあった。それぞれの計器の長所をフルに活用している状況を見ることができた。                     
 磁気コンパスは操舵用であるが、自差修正が良好に行われ、自差表を手元に置いていた。

ハ. (宇品〜呉〜高浜〜三津浜)

 主たる航海計器としてはレーダー2基のみ、内1基を常時稼動させ、視界の良・不良に関係なく最大に活用されていた。気象放送受信装置はあるが風向・風速計も無い。また、ジャイロも設置が無く、磁気コンパスのみでは、トラック積荷等による誤差の変動が懸念されるが、知り尽くした航路数ゆえ安全運航の原点たる見張りがしっかりしていれば問題ないと思われる。ただ、慣れによる油断だけは注意していただきたい。通信施設は船舶電話、VHF、近距離用トランシーバー型と3種を備え十分である。

ニ. (熊本〜島原)

 装備された航海計器は有効に利用されている。磁気コンパスは装備されていない。ジャイロエラーは第1便出港時に停泊時の船首方位によりチェックしている。

ホ. (鮎川〜金華山)

 操舵用磁気コンパスとレーダーを装備している。レーダーは航海中常時使用して、距岸0.25海里を「定置網等の障害物に対する避険線」としているとのことであった。

ヘ. (宇品〜呉〜高浜〜三津浜)

 GPSを利用した全自動航跡追尾記録システム、レーダー2台等で平水の小型フェリーとしては最先端のハイテク計器が装備されていた。昼間の気象良好な航海で一応の確認程度の活用であった。

 

<検討事項>

イ. (泊〜阿嘉〜座間味)

 なお本船は、座間味島南方の安室島東方にある安室牛瀬(Amuruusiri)と平瀬(Hirasi)間を航行していたが、それら両瀬はプロッター画面上への表示がなく、海図情報と100%互換性のあるものではないことを認識する必要がある。導入に当たり、必要な航路情報が確実にユーザーへ提示されるものであるかどうか、機器信頼性を向上させるためにもメーカーのユーザーに対する適切な対応が必要である。
 双眼鏡は、いつでも使えるよう手近に置いておくべきである。(伸び上がらなければ手の届かないところにあった。)

ロ. (泊〜真泊〜渡名喜)

 通信機器は、VHF、専用無線電話、船舶電話であったが、VHFはほとんど利用されず、専ら専用無線と船舶電話を利用していた。
 簡易ECDISとレ−ダ−の調整機能は、手動調整で行われ、同調、STC、FTC、使用距離レンジ等の諸調整について、漁船、漁具等の小物標をレーダーで探知することを主眼とし、さらに、常時最適な作動状態としながら適切に使用されていた。しかし、レーダーのSTC、FTC調整が十分でないように見受けられたため、サービス業者に調整を依頼する必要があると思われる。
 双眼鏡の接眼レンズ(左眼用)にひび割れがあったため、早急に修理していただきたい。双眼鏡は、適切な見張りを行ううえで欠くことのできない航海用具であり、その取扱いは丁寧にしかも過大な衝撃を与えないことが大切である。
ウインドワイパーブレードのゴムに劣化が見られた。クリアな視界を確保するためには、早急に交換することが望ましい。

 

 

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