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3.操船指揮および乗組員の執務状況について

 

(1) 長・中距離フェリー

イ.(青森〜函館)

 出入港スタンバイ時、船長は操船指揮を十分慎重に行い、機関長も必要事項を適宜報告しており、良いチームワークが見られた。

ロ.(大阪南港〜新門司

 両船長の出入港、狭水道通過時の操船指揮は優れた技量で行われた。当直航海士、操舵員の船長への補佐、復唱等も的確で執務態度も良好であった。出入港時と来島海峡通峡時の主機遠隔操作は船長が行っていたが、船長との連携、コミュニケーションも緊密で、三等航海士は船長の側で補佐に専念していた。出入港部署解除の早さを指摘されるが、本船では「アンカー要員を除き開け」等、二段階に分けて解除されていたのは、安全運航上好ましいことであった。

ハ.(呉〜広島〜別府)

 船長の操船技術は優れており、冷静沈着に指揮をしている。乗組員も要領良くチームワークのとれた執務態度であった。毎日同じ航路に就航しているため、乗組員は作業手順を良く理解している。したがって、作業密度の高い離着岸作業や車両揚げ積みも静粛にスムーズに行われている。老人等の付き添い者が必要な乗客に対しては、乗組員が車両甲板から客室に安全に誘導している。慣れによるマンネリに陥らないように運航管理者は常々指導しているとのことである。

ニ.(鹿児島〜屋久島)

 船長の操船指揮は、大胆かつ慎重そのものであり、信頼のおける内容であった。宮之浦入港前には、気象海象状況の確認や機関後進の確認、さらにフィンスタビライザーの格納確認等の確認作業が、適時、適切そして確実に行われていた。特に、他社の事故を教訓に、フィンスタビライザーの格納忘れによる事故を防止するために、次の4段階で確認している点は注目できる。
 ?船橋全面ガラス手前に"フィン 張出し中"という簡易表示板を置いて船長の確認忘れを防止?船橋コンソールに"フィン 張出し中"という簡易表示板を置いて機関長の確認忘れを防止?機関制御室からフィンスタビライザーの格納状況を現場確認?機関制御室内のフィンスタビライザー格納表示ランプを確認
 乗組員およびサービス員全員が、鹿児島県出身者でそれぞれの長の下、よくまとまりテキパキと職務をこなすとともに、業務を行いながら互いに軽い会話を交わすという良い雰囲気が満ちていた。

ホ.(東京→父島)

 出入港配置は、船橋:船長・三航士・甲板手・三機士、船首:一航士ほか3人、船尾:二航士ほか2人で、船長の操船指揮は明瞭適切であった。乗組員の復唱・報告も大声(船首尾は無線電話使用)で適切に行われていた。乗組員の当直態度は良好であった。

ヘ.(川崎〜宮崎)

 船長の操船指揮(離着岸時)は、落ち着いた大きな声でのオーダーで分かり易く、また、その技量も優秀であった。航海士の船長オーダーに対する報告も、周囲の状況に関しての報告も適切であり、ブリッジ内のコミュニケーションも良好であった。船長の操舵号令は、基本的にはIMOの度数指示によるものであったが、ポートイージーのような旧オーダーとの混在が見られた。ただし本船は内航船でもあり大した問題ではない。

 

<検討事項>

イ.(青森〜函館)

 一航士〜船長の引継ぎの際、不明瞭な部分があった。船長および当直航海士の操舵号令に対する甲板手のアンサーバックの声が小さい。甲板手の交代引継は、当直航海士にも確認できるように大きな声で明瞭にされたい。

ロ.(鹿児島〜屋久島)

 屋久島出港時、船首のスタンバイ解除の時期が早過ぎる。船首が内防波堤を通過したところで解除がなされていた。周囲が見えるとはいえ、外防波堤を過ぎるまで本船は防波堤内にあるので、不測の事態に対応できる状態を維持すべきである。

 

 

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