<小野貴史プロフィール>
1971年4月14日生まれ
1995年東京学芸大学教育学部総合社会システム科卒業
現在、宮地楽器小金井店に勤務
また、東京学芸大学大学院作曲専攻科1年に在学中
作曲を吉崎清富、金田潮兒、山内雅弘各氏に師事
光とともに西へこそ行け(1997)
―ヴィオラ・ソロパートを伴うオーケストラのための―小野貴史
Go toward the West with a gleam for Orchestra(accompanied with Viola solo part)
みがくべき 心の月の曇らねば
光とともに 西へこそ行け
これは戦国武将の荒木村重の正室・多子(だし)が、織田信長に処刑される際に詠んだ辞世の歌である。夫の村重は、そのとき既に守るべき城や妻子を捨て、少数の家臣のみを従え、信長に敵対する毛利方に逃げ出してしまっていた。
この曲において、オーケストラは人間をとりまく運命/現実であり、ヴィオラはそれに抗う人間を表現している。人間(ヴィオラ)は自分をとりまく現実(オーケストラ)に抗うも、次第に呑み込まれて行き、やがてはそれを受け容れる。……以上のようなプロセスをオーケストラ曲として表現してみたかったのであり、コンチェルトの形態をとらなかったのも、そのためである。また、曲中においてトーナルセンターとして使われているE音は、陰陽方位学における「西」を示す音(=平調)であり、また、それに対峙する形で同じく方位学で中央を示すD音(=壱越)が重要な役割を担っている。
最後に、この機会をくださった方々、および演奏してくださる方々に厚く御札を申し上げます。