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その結果、3票以下の計10曲(No.1、No.2、No.3、No.4、No.5、No.7、No.13、No.14、No.16、No.17)がはやくも選考対象外となった。しかし3票を取った作品については、委員の間で、論議が戦わされた上での決定であった。あとの7作品については、最低でも5票以上の得票があった。

さらに選考は第2次に進み、7曲について、さまざまな論議を重ねた上で、同じく挙手の形で、各委員の賛否をはかったところ、2曲(No.8、No.9)が3票、1曲(No.10)が4票、2曲(No.12、No.15)が5票、そして2曲(No.6、No.11)が6票を得た。三善委員の評価については、<B->、<B△>は対象外とし、<B>と<B+>とを一票に計算した。

最低得票数3の2曲について、委員の間で論議がおこなわれ、この2曲に投票した委員の立場からは積極的な発言が、また投票しなかった委員からは批判的なそれが表明されたが、結果としては、これら2曲が、ここで対象外とされ、5曲(No.6、No.10、No.11、No.12、No.15)が、第3次の選考に残された。

さて、最終的な第一次選考は、これら5曲をめぐってつづけられ、それぞれの委員からさまざまな意見が表明され、活発な論議もたたかわされた。この時点では、単に作曲理論的な側面ばかりではなく、演奏面についても、第2次選考会も兼ねる作品の演奏の際にオーケストラの指揮者をつとめられる秋山和慶氏の演奏面での評価も参照されつつ、論議が続けられた。

論議のあと、今度は、対象作品5曲のうち、3曲を限度としての投票がおこなわれた。その結果は、6票が2曲(No.6、No.11)、3票が2曲(No.12、No.15)、そして2票が1曲((No.10)であった。この結果から、6票を得た2曲(No.6、No.11)は入選作と結論づけられたが、2票しか得られなかったNo.10については、討論をへて、対象外とした。残された3票獲得の2作品(No.12、No.15)について、さらに論議が続けられたが、指揮者による演奏上の可否の判断も考慮され、最終的にNo.12が残るもう1曲の人選作と決定した。

これらの人選作(No.6、No.11、No.12)の3曲は、本日平成10年7月3日(金)におこなわれる<現代日本のオーケストラ音楽>第22回演奏会で紹介される。<なかのZERO大ホール>でのこのコンサートは、この作曲賞の第2次選考会を兼ねるもので、作曲賞が決定される。演奏は秋山和慶指揮の東京交響楽団である。

今回の入選作とその作曲者の紹介に移ろう。

 

田頭勉:「Rei」for Orchestta

佐藤昌弘:トランスフィギュレイション―ピアノとオーケストラのための

Transfiguration for Piano and Ochestra

小野貴史:光とともに西へこそ行け―ヴィオラ・ソロパートを伴うオーケストラのための―

 

田頭勉(たがしらつとむ)氏は、昭和37年7月生まれの35歳。東京芸術大学大学院で作曲を学び、修士号を得ている。作曲を松村禎三、浦田健次郎、山田泉、丸田昭三の各氏に師事し、9年前の本日本交響楽振興財団第11回作曲賞に入選を果たしている。

「Rei」for Orchestraは「亡父に捧ぐ」という献辞を伴った約18分の作品で、作曲者は次のような<作曲の意図>を寄せている。

「これが私のオリジナリティです、というようなものは私自身には見つけようもありませんし、真新しい手法や方法論というものもありません。ただ、私が感じ表現したい音楽を、より、音楽として効果的に表現するために考え、あくまでも音楽的工夫を模索した結果、私なりの音楽がそこに現われ、私の音楽の匂いがしているのではないかと思います。

 

 

 

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