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平成10年度「地方債に関する調査研究委員会」報告書の概要

調査研究テーマ「公社債市場の拡大期における流通性向上等のための地方債のあり方」

 

1. 調査研究の趣旨

今日の地方財政は、景気低迷の影響から税収等が伸び悩んでいる等、大変厳しい状況にある。一方、金融・証券市場は金融ビックバンという大きな流れの中にある。このような中で、地方公共団体が民間資金を安定的に調達し、効率的に活用するためには、地方債の流通性の向上が必要である。このため本年度調査研究委員会においては、流通性向上等のための地方債のあり方について、発行面を中心に検討することとした。

 

2. 報告書の概要

本年度委員会では、地方債の流通性向上策を総括し、主として「地方債の共同発行」、「縁故地方債の満期一括償還方式の導入」、「地方債に関する情報提供」の3点について検討を行った。

(1) 地方債の共同発行

1)一部事務組合による地方債の共同発行(地方財政法第5条の5)

地方財政法第5条の5は、一部事務組合が地方債を共同して起こすことができる旨を規定し、その場合には当該組合と当該組合を組織する地方公共団体とが連帯してその償還及び利息の支払の責に任ずるものとしている。この方式では、新たな法整備や法改正を行う必要が無いことなどもあり、他の方式と比較して実現性は高いと考えられる。

現行法には、連帯債務を負う旨明記されているが、これは財政力の弱い団体が共同して一部事務組合を作り、連帯することにより有利な発行条件で資金調達を図ろうとしたものであるが、現在においては、公募地方債を発行しているような大きな団体がさらにロットを大きくするため一部事務組合を作り共同発行する場合も考えられ、流通性向上といった観点からは必ずしも連帯債務を義務付けずに発行可能な法制度を整備する必要がある。もっとも市場から受け入れ易い条件等について、今後さらなる検討が必要であると考えられる。

他の検討課題としては、新たなシ団の編成が必要なことやそれに伴う指定金融機関との関係といった点が考えられる。

2)地方債証券の共同発行(地方財政法第5条の6)

地方財政法第5条の6は、二以上の地方公共団体が議会の議決を経て連名で地方債証券を発行することができるものとし、その元利償還金の支払について、連帯債務を負うこととしている。一部事務組合による共同発行債券が当該一部事務組合の名により発行されるのに対し、関係地方公共団体の名称を直接券面に表示する方が、消化等の面で便宜であることも考えられ、そのような場合も考慮して、証券の共同発行が制度化されている。

なお、この地方債証券の共同発行の実例としては、大阪府・大阪市が昭和37年から昭和40年までドイツ(旧西ドイツ)において発行した外貨建地方債の共同発行がある。

もっとも一部事務組合方式と同様に連帯債務責任、発行団体の範囲、発行額・発行時期、及びシ団の調整が課題であると考えられる。

3)第三者機関による地方債の共同発行の仕組み

現時点で、将来的に考えうる共同発行の仕組みとして、今後検討すべき多くの検討点はあるものの、次の2つの方向性が考えられる。

イ. 直接貸付方式を前提に地方公共団体の委託による場合

この方式は、地方公共団体が共同発行機関に公募債の発行を委託し、同機関名義で債券を共同発行するものである。地方公共団体は同機関が調達した資金を借り入れる。

 

 

 

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