沼田 忠純(ぬまた ただすみ)(昭19.9.6生・神奈川県横浜市)
多年にわたり航空機の客室内装備品の整備、制作面での開発に従事し、加工方法の改良や低コスト化を図りつつ機内の美化と快適性を追求し、安全で楽しい空の旅作りに貢献された。
1] 航空機の客室を構成する壁、窓、床、照明、カーテン、椅子等はいずれも安全な材料であることと丈夫さが求められるとともに、楽しい旅を演出する調和のとれた感じの良い、使い心地の良いものが要求される。氏は、昭和37年以来、優れた整備を行いながら数々の創意工夫を行い、加工方法の改良、労働環境の改善、コストの軽減等を図り、斯業の発展と航空運輸交通の発展に寄与するとともに、後進の育成、技術の伝承に努めている。
2] 客室内壁の表面材張替用加熱圧着装置の開発
客室壁面の表面材の張り替えを行う場合には、機体からパネルごと取り外し、60℃の高温の作業室でパネルに表面材を圧着加工する過酷な作業を行っていたが、昭和50年代の初め、パネルが入る大きさの加工装置を考案した。バキュームバッグで加工体全体を包み込んだ上で空気を抜き去り、その中に熱風を送り込み接着を容易にする装置で、作業の仕上がりが良く、大幅な熱エネルギーの節減と同時に熱風が外に漏れないので、作業環境が改善された。
3] カーペット製作・5000種以上の型紙製作
室内のデザインの変更、座席位置変更時や、新規の航空機の導入に際し、航空各社の要請に応じて、複雑な敷き込み形状を現場で採寸、型紙化、そして図面化の上、カーペットの敷き込みを行った。これらは整備や運航の合間の主に夜間帯において、座席の装着されている狭い機内で行う困難な作業であるが、運航スケジュールに支障を来さないように迅速的確に製作を行っている。5000種以上に及ぶ型紙が、苦労と工夫の跡を物語っている。座席カバーの張り替えについても同様の対応をしている。
4] 安全性への取組
航空会社、繊維メーカーと協力して、カーペットに導電性の材料を入れた静電気防止対策や、カーペット材料の難燃化の開発を行った。その他針などの異物混入防止対策など安全対策には万全を期して取り組んでいる。また、整備用部材の自社製品化を行い、コストの軽減にも努めている。
((財)航空振興財団推薦)