原 重夫(はら しげお)(昭5.9.23生・東京都品川区)
昭和28年以来生活廃棄物の海洋投入処分業務の円滑な運営と適正処理に尽力し、作業従事者の安全・福利に努めて、住民の公衆衛生の維持、生活環境の保全に貢献された。
1] 下水道が整備されトイレの水洗化が進んでいる現在、住民はし尿等の処理について考える必要も無くなったが、し尿、浄化槽汚泥等の処理業務は一日たりとも欠かせないもので、事業関係者は、利害を度外視してその社会的使命を全うするため日夜努力している。
昭和28年以来、自ら海洋投入船に乗って作業を行い、また、その経験を生かして総務・労務担当の責任者として、住民の生活環境の保全に努めている。
2] 昭和33年9月、翌34年8月、台風により水路である東京・目黒川の氾濫や地下水位が上がってトイレが冠水しそうになった時には、扱い量も急増し、保管・積込・搬送作業は急を要し困難を極めたが、自ら陣頭に立ち汚物を浴びながら夜を徹した作業を行い、円滑な処理を行った。
優秀な労働力の確保は最も重要であるが、経済の復興、高度成長の過程において、この業界は、給料も安く3Kの職場として敬遠され、話を聞いてもらえず追い返されることが日課となるほどであったが、東京から北海道にかけてつてを頼りに船員を訪問し、あるいは直接波止場や船員溜まりに出かけ、社会的使命を説明して、船員の確保を行った。
3] 昭和42年頃までは、木造船が大半を占めしかも船内居住者が多かったが、定期健康診断を実施し、遠隔地の留守家族との連絡を密にするなど、船員が安心して働ける環境づくりを行った。
4] 昭和50年度までは、投入海域が領海の基線から15海里以遠であったが、51年度からは50海里以遠となったため、作業の迅速化のための機器の改良・操作の工夫(投入のためのポンプアップなど)、安全確保のためレーダーの設置や航海記録装置の取付、居室の改善(個室化)などを行った。
5] 国際条約、海洋汚染防止法、廃棄物処理法等を受け、平成14年(東京都は4年3月で終了)には、し尿等の陸上処理装置の整備が完了する予定であり、その時点でし尿、浄化槽汚泥等の海洋投入も終結する。関係業者や従事者が次々と撤退する中、最後の1日まで手抜きのない適正処理を心がけ、住民の公衆衛生の維持と生活環境の保全・向上に努めている。
(日本環境保全協会推薦)