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高島 惣三(たかしま そうぞう)(昭2.1.7生・青森県八戸市)

昭和40年以来30年余にわたって、青森県八戸市魚市場周辺の廃棄物の片づけ・清掃を行い、日本有数の水揚げを誇る漁港周辺の環境保全と美化に貢献された。

1] 八戸市は、東北6県のうち県庁所在地以外では唯一20万人を超える人口を有する、漁業によって発展した都市である。

氏は、八戸市の消防職員になる以前はいか釣り漁船の機関士であったが、水揚げが多く漁港が活気づけば活気づくほど、船から出る不要品、生活ゴミがまるでゴミ捨て場のように岸壁に投棄される状況であり、注意しても生産優先で聞き入れる者は少なく、同じ関係者として複雑な気持ちを抱いていた。

2] 昭和23年に消防職員となってからは、職務に専念して取り紛れていたが、同40年全国有数の水揚げ量を誇り関係業者が多数集まる市場周辺が、「このように汚く雑然としていて良いものか?」と、かつてから抱いていた思いを蘇らせ、一念発起し、第二魚市場周辺岸壁東西1.3kmの地域の廃油、不要品、流木、生活ゴミなどの片づけ、清掃を行うようになった。

職業柄、変則的な勤務であったが、夜間の火災現場出動や台風の時などにも帰宅前に必ず見回った。家族に奉仕内容を説明することもなく続けるうちに、夫人から作業着の汚れや帰宅時間を指摘されたことも何度となくあった。ある時には、岸壁に捨てられた廃油が燃えているのを見つけ、消防職員の当然の勤めとは言え、消防車が到着する前に消しとめていたこともあった。

片づけをする不要品やゴミの中には、鉄屑など当時としてはまだ価値のあるものもあり、これは古物商に無料で提供したが、これを見た周辺の住民から古物商と間違われ、家庭の不要品を売り付けようとされたこともしばしばあった。

3] 昭和60年2月、高齢者退職で消防署勤めの拘束から解き放たれた時は、追憶に浸るより岸壁清掃のことで一杯だった。

「時の流れで人情は薄れても塵が減ることはない。」という持論と、自分で出来ることをやらせてもらっているだけという信念で、毎朝5時から6時、夕方3時から5時まで清掃を黙々と続けている。

(青森県推薦)

 

 

 

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