荒井 武(あらい たけし)(大14.11.11生・神奈川県川崎市)
昭和54年に喉頭摘出手術を受けて音声機能を失われ食道発声法を習得して以来、喉頭摘出者に対する音声回復のための食道発声技術の指導・訓練、社会復帰を通じて、福祉の向上に貢献された。
1] 昭和54年10月、喉頭がんによる喉頭摘出手術を受け、退院後直ちに銀鈴会に入会し、食道発声法による音声回復訓練に励み、厳しい努力を重ね食道発生を習得して“声”を取り戻した。同57年5月にはその技能を評価されて食道発声指導員になり、以来16年間にわたり、同会が毎週開講しているリハビリテーション教室の講師として無報酬の奉仕活動を続けている。
喉頭摘出した無声者に対する指導はこれまでに1000名を超え、特に不安に駆られる初心・初級の訓練者に対しては、温厚な人柄と入念な指導・説明を繰り返して希望と安心感を与え、練習意欲を盛りたてた。
「第2の声」と言われる食道発声を会得して見事に社会復帰を果たした多くの会員から敬慕されており、氏の優れた指導力と音声を取り戻そうと努力する人々に対する貢献の大きさを示している。
2] 同会の発声訓練は年間100回を超す頻度で行われており、リハビリテーションは訓練の性格上からマン・ツー・マンが望ましく、技術面はもとより心理的カウンセリングが重要な要素であることは医学者・学識者が等しく指摘しているところであるが、氏の初心者に対する指導はこの点間然する所がない。
氏の発声技法は模範的な正確さであり、食道発声法という技法を平易に理解させるのに不可欠な、ビデオ・スライド等の視覚教材のモデル演技には常に出演しており、全国各地の同種団体における指導教材として広く利用されている。
3] 平成2年以来同会監事に在任して事業の公正・的確な運営を監査し、公益法人としての使命に齟齬をきたさないよう職責を果たすとともに、毎年東南アジア13ヶ国が参加する「アジア連盟」各国からの喉頭摘出者を受け入れての訓練では、来日する研修生に対する指導担当者の一人として活躍している。
((社)銀鈴会推薦)