井上 加代子(いのうえ かよこ)(昭4.8.29生・神奈川県川崎市)
多年にわたり看護婦及びハウスキーパーとして、ハウスキーピングの重要性、病院ハウスキーパーの指導育成に努めるなど、病院看護業務と患者の福祉向上に貢献された。
1] 昭和24年から各地病院で看護婦として精励し、同38年6月に東京三鷹新川総合病院内科病棟婦長になった。年に2〜3人重症の行路病者が運び込まれ、親族のいない患者の失禁にはおしめが無く困った。当時、患者のおむつは自己負担でそれぞれの家族が持参しており、身寄りのない人に対しては1日に40〜70枚くらいを必要としたため、看護婦仲間で古いシーツや下着類を持ち寄って対応し、患者を汚れたままで死なせてはならないと必死で洗った。患者自己負担の原則改善を病院内で働きかけ、また市役所の福祉課等にも連絡したが実効はなく、社会に訴えたいと考え看護関係団体にも実情を訴え続けた。献身的な努力が報われて、今日この問題は改善されている。
2] 昭和34年から勤めている病院が、同45年杏林大学医学部附属病院に衣替えして病院組織が変動する中、53年8月ハウスキーパー業務に職務転換した。病院ハウスキーピングとは病院管理の先進国である米国の概念によるもので、病気の診断治療だけでなく、病院における患者の生活環境を整備し、安全で快適な生活の場を提供することで医療の一端を担おうという理念によるものである。
清掃、寝具等リネン洗濯、衛生、害虫駆除、廃棄物処理、建物・設備の保安、保全など業務範囲は広い。看護婦30年の経験を基にこれらの業務に積極的に取り組み、病院ハウスキーピングの重要性を周囲に認識させるとともに委託業務についての規定、手引き類の作成を行い目的に適うようにした。同55年からは日本病院会のハウスキーピング研究会の委員となり、各病院で急増した担当者を集めて勉強会を開催し、病院組織と社会的役割、病院清掃の目的と特殊性、作業計画・方法、作業の点検と評価、清掃区域等の特殊性、感染予防などをテーマに講演し、指導育成に尽力している。
3] 平成3年「病院機能標準化マニュアル」の作成に際してはハウスキーピング項を担当した。同4年以来、厚生省の医療関連サービス基本問題検討会の院内清掃部会委員となり、病院を退職した現在も病院ハウスキーピングの第一人者として、患者の生活環境の整備充実と後進の育成に活躍している。
((社)日本病院会推薦)