金山 千代子(かなやま ちよこ)(昭3.4.30生・千葉県松戸市)
聴覚障害児の家庭における早期教育と残存聴力の活用による普通小学校への就学を提唱して実現、聴覚障害児の早期教育の普及と強化に努めるなど、障害者の福祉向上に貢献された。
1] 昭和45年から26年間にわたり母と子の教室室長として指導を続け、短期、長期の違いはあっても直接指導を受けた児童は3500名に及んでいる。聴覚障害児の早期教育の基本理念を示す母親法の生みの親であり、同教室で指導を受けた多くの児童が専門学校、大学等の高等教育を受け社会人として各分野で活躍している。
この教室は家庭における乳幼児教育の普及をはかるため母親を援助する施設といえるもので、週1回程度の母子への個人指導で母親法の理解と実習指導が主である。一方、集団研修では定期的に開く母親講座、年1回の教室の実践報告、修了生(指導を受けた者)の体験発表等を内容とする言語聴能教育実践夏期講座の開催があり、なかでもこの講座は同59年から今も続けられ、新しい指導システムとして示唆に富んだものとなっている。
2] 研究活動の中にも障害の早期発見のための乳幼児聴力検査法の改善、補聴効果を高めるための補聴器の選定、補聴器の適合(フィッティング)の研究、さらには乳幼児の肩掛補聴器の開発等聴覚活用の効率化に向かって研究成果を発表している。また、就学前の乳幼児の指導で終わることなく修了生の指導も忘れず、人格形成の一助として演劇指導を試み、同55年には修了生による劇団エンジェルを結成、年2回の公演も行い、また修了生の体験発表を内容とする青年の主張の会を開催している。
3] 昭和61年8月英国・マンチェスターでの第17回聴覚障害児教育国際会議で「母と子の教室における両親への援助について」と題して発表以来、海外でもカナヤマのマザーメソドとして知られるようになった。
平成4年タイ王国・ジョムティーンでの第3回アジア・太平洋聴覚障害問題会議においても、修了生の言語能力、社会性能力、学校職場適応のそれぞれの調査実施の結果と指導経過を発表して聴覚障害に関する貴重な資料を残すなど、障害者の福祉向上に貢献している。
((財)聴覚障害者教育福祉協会推薦)