高橋 モトヱ(たかはし もとゑ)(昭12.6.30生・秋田県雄勝郡雄勝町)
多年にわたり秋田県内有数の多積雪地帯にある、病院・養護施設などにおいて各種介護サービスに努め、湯沢市雄勝圏域の住民の健康増進と社会福祉の向上に貢献された。
1] 昭和30年、秋田県厚生連雄勝中央病院に入職した最初の勤務地は、当時僻地に数ヶ所設置されていた診療所で、午前中は外来診療を、午後は医師と共に往診をすることが主な業務であったが、脳卒中発症者が多い地域性から、時期や時間を問わない往診依頼もたびたびあった。冬季は一般国道さえも通行不能となる中、吹雪でかき消された一本道を懸命に探しながら雪をかき分け数も進んで行かねばならないこともあったが、救急救命の強い使命感で献身的に努めた。
雄勝中央病院勤務となってからは、総合・救急指定病院404床の巡回診療部の担当となり、住民の看護をするとともにそれまでの体験と地域特性を生かした健康教育に精進した。
2] 若い働き手は殆ど圏域外に流出し、高齢人口は20%を越え、高齢者が高齢者を介護しながら農業を支えている地区が多くなり、病気の慢性化、高齢による機能低下の進行は、病人が自宅で療養することを困難にし、特に冬季には施設や病院に入ることを余儀なくしていった。この状況を改善するため、雄勝町では特別養護老人ホーム平成園を開設することとなり、運営管理を任せられる人材として氏がホーム開設から運営の基盤づくりまで依頼された。
3] 家族と離れての施設生活に不安を感じる人々や各種介護サービスを求めて適所する人々が、安心してサービスを受けられる環境づくりが必要と考えていたことから、雄勝中央病院を退職し一年間自ら他施設で研修を受け、宿泊実習を行ったりして、施設で生活する人々の思いや要求に触れた。この体験は「病気であれば治療を、障害や機能低下には介護を、孤独には心の癒しを」という対応となって、その後の職員教育に大きな示唆を与えている。
4] 平成2年のホーム開設当時、社会福祉施設における「入所させてやる」という奢った意識を「人間対人間」としての意識に変革し、高齢者が心身ともにリラックスして暮らせる環境づくりにも尽力し、ショートステイやデイサービスの利用者も増え、必要な時には誰もが使える在宅福祉が自然な形で定着してきている。
((社)日本看護協会推薦)