奥野 平次(おくの へいじ)(明43.6.15生・大阪府交野市)
昭和26年交野町・倉治古墳群の発掘調査に携わって以来、多年にわたり大阪府の北河内地域を中心とする地域の歴史研究や文化財の保護活動に傾注し、地域の文化財の保存と継承に貢献された。
1] 昭和26年大阪府北東部の交野町(現・交野市)で、関西電力枚方変電所の建設に伴う整地工事中に古墳(倉治古墳群)が発見された。同電力に勤務していた氏は、上司を説得して文化財発掘調査を実施させるとともに、自らも積極的に同調査に協力した。この調査を契機として興味を持った考古学を専門的に勉強し、また地域の民家に残されている文書を収集するなど郷土史の研究をも進めた。
2] 当時、昭和初期頃には、文化財保護行政は確立されてなく、また考古学研究者も少なく、大阪府内の市町村には、文化財の専門職員はほとんど配備されていなかった。このため氏は、倉治古墳群(昭和26年)、神宮寺遺跡(同32年)、南山遺跡(同34年)等の遺跡発掘調査に直接携わることとなり、地元住民との交渉や協議、発掘調査現場の立ち会い等を無償で行った。
3] 昭和35年考古学、文化財に対する熱意と深い造詣が認められて交野町史(のち交野市史)の編纂委員となり、伝承される交野のわらべ唄、勤労歌、年中行事等の調査研究を10年余にわたって続け、民俗篇を著した。また同35年以来、交野市文化財保護委員として、同市内に現存する重要文化財、大阪府や交野市の指定文化財のほか隠れた文化財の保存・活用にも努めている。
4] 昭和43年大阪府が創設した文化財愛護推進委員となり、文化財の防火・保護等の地域活動、史跡の現状変更や埋蔵文化財包蔵地の土木工事に関する監視、文化財保護思想・文化財愛護精神の普及啓発に率先して活躍した。また同54年からは、文化財保護法に基づく大阪府文化財保護指導員として、北河内地域の文化財を中心に巡視を行い、他地域の模範となる積極的な文化財の保存状況の調査・報告を行うとともに、文化財所有者等関係者に対する助言を行ってきた。
5] 昭和47年5月に発足した交野古文化同好会の会長として、創設以来、市民に対する文化活動、市民講座の講師となり文化財愛護精神の普及啓発活動を精力的に実践する一方、同56年から平成5年まで10数年をかけた「ふるさと交野を歩く」(全6巻のうち1〜5巻を執筆・第6巻は共著)を刊行するなどの著作活動も行って、次代の人々に郷土を伝えるため尽力している。
(大阪府教育委員会推薦)