渡辺 治雄(わたなべ はるお)(大8.7.31生・東京都新宿区)
鳶工事業の傍ら、多年にわたり江戸消防記念会等の要職を歴任して木遣、纏振り、梯子乗りの指導書編纂や後進への技術指導、文化財の修復等に積極的に取り組み、伝統文化の継承に貢献された。
1] 昭和20年家業の鳶工事業を継いで東京・新宿地区の復興に鳶職として尽力して以来、同35年東大の赤門、36年田安門など文化財の修復工事と携わるとともに、ボランティアで木遣、梯子乗り、纏振り等、鳶の伝統文化の保存振興にあたっている。特に江戸町火消の風俗や祭具の保存継承さらには祭りの事故防止を図るため御輿の担ぎ手との対話に努めるなど、文化の伝承にとどまらず青少年の育成指導、新宿地区の発展に寄与している。
2] 昭和50年江戸消防記念会第3区4番組組頭に就任して以来、新宿花園神社の出入り職人頭兼祭典委員を務めているが、同神社は都内有数の“酉神社”で数々の文化財と2基の大型御輿を有していることから、毎週2回自発的に宝物殿と御輿格納庫を巡回し、清掃はもとより火気や湿度の点検、要修理箇所の点検などをボランティアで実践している。
3] 昭和61年以来同神社本社御輿総代付組頭となり、夏祭りにおいては本社御輿2基巡行の最高責任者として事故防止と規律の取締にあたっており、これまで1件の事故も起きていない。また、初詣、節分会、酉の市などの行事では交通取締の責任者として事故防止に努めている。
4] 昭和53年から12年間にわたり、江戸消防記念会本部の文献調査委員会副委員長として鳶伝統文化に関する文献の整理を行い、同会30周年記念誌の編纂に役立てたほか、日本鳶伝統文化振興財団の文献委員・技術指導員として木遣、纏振り、梯子乗りの指導書の編纂にもあたるなど、伝統文化の振興に貢献している。また、同財団の指導員として、毎年数回全国各地で開催される鳶職団体等の講習会、講演会等において、技術指導と伝統文化の沿革に関する講義を行い意識の高揚に努めている。
5] 江戸町火消の風俗展示を主宰するほか多年御輿の研究も続けて、伝統工芸に即した御輿の製作を御輿師に助言して伝統祭具の保存継承に努める一方、伝統文化継承の見地から、粗暴に陥り事故や喧嘩に結びつきやすい御輿の担ぎ手との対話を積極的に行うなど、青少年の育成指導にも尽力している。
((財)日本鳶伝統文化振興財団推薦)