(社)琉球水難救済会座間味(ざまみ)救難所
(代表 金城 忠彦・沖縄県島尻郡座間味村)
平成9年12月27日午前、沖縄県座間味村阿嘉島から那覇港に向け航行中の高速連絡船が、岩礁に接触し浸水した。同船に乗り合わせていた座間味救難所副所長は、乗客の動揺を静めるとともに救難所に事故を速報して救助を要請した。所長は所員と8隻の救助船で現場に急行し、沈没寸前の連絡船をロープで曳航して最寄りの島の砂浜に乗り上げさせるとともに、救助船で乗客乗員116名全員を無事救助された。
平成9年12月27日午前10時30分頃、沖縄県座間味村村営の高速連絡船“クィーンざまみ”(107トン・乗員4名)は、乗客112名を乗せて慶良間列島にある阿嘉島の阿嘉港から那覇港に向けて出航した。出航して間もなく前線の影響を受けた海上には、10mから12mの風が吹きつけ波高も2m前後と時化模様になった。風波を船首方向から受けて波しぶきで前方の視界が遮られ、船体の揺れも激しくなったため、船長は予定のコースでは航行困難と判断し針路を変更した。船の揺れによる乗客の船酔いなどを懸念し、当時の海象状況では比較的平穏な阿嘉島の東にある渡嘉敷島の海上に映る島影に沿って西海岸を北上するコースを選択したが、この海域は水深が浅く岩礁が点在するため細心の注意を要した。
同10時40分安室島の南約1.5kmの浅瀬で岩礁に船底部が接触し舵とプロペラを損傷、さらに船底外板の亀裂による浸水で航行不能に陥った。たまたま乗り合わせていた座間味救難所副所長は事故で動揺する乗客を静めるとともに、船員と協力して救命胴衣を乗客に着用させ、船舶電話で救難所に速報した。通報を受けた所長は直ちに救難所員を非常呼集し駆けつけた8名の所員と共に、8隻の漁船に分乗し同10時50分現場海域へ急行した。
現場に到着し、浸水のため沈没寸前の“クィーンざまみ”を確認すると、所長は沈没を防ぐため浅瀬へ乗り上げさせることにした。“クィーンざまみ”にロープをとり8隻のうちの1隻の救助船で、最寄りの慶留間島の北側にある砂浜へ曳航し乗り上げさせることに成功し、また直ちに乗客乗員116名全員を救助船に乗せて阿嘉港へ送り、無事救助を完了した。所長以下救難所員の適切な判断と迅速な救助活動によって惨事を免れることができた。
((社)日本水難救済会推薦)