丸田 和美(まるた かずよし)(昭41.9.9生・長崎県佐世保市)
平成10年1月22日の夕方、運転者として乗務中であった路線バスが刃物をもった男に乗っ取られる事件が発生したが、氏は、長崎市内約10kmを走行し2時間後に犯人が逮捕されるまでの間、公共交通機関の使命をよく認識して沈着冷静に犯人に対処し、事件の早期解決に貢献された。
平成10年1月22日午後5時20分頃、氏が運転する長崎自動車の路線バス(長崎市中央橋から福田町)が、同市福田本町付近を走行中に刃物を持った男に乗っ取られた。男は最後部座席に座っていた女性乗客に刃物を突きつけ、「バスを止めるな。稲佐警察署へ行け」と指示した。
バスの車内には十数名の乗客が乗っていたが、氏は、バスが福田本町バス停に着く直前に咄嗟の判断でバスを停車させ、前方の降車ドアを開けた。そのためほとんどの乗客はバスから降りて逃げることができた。脱出した乗客や、話を聞いた付近の住民らが110番に通報した。
氏と男女各1名の乗客を人質として、男は再びバスを発車させ、自分と女性乗客の身体や衣服に隠し持っていた灯油をかけ、ライターで火をつけるそぶりを見せ「稲佐署へ行け」と再び脅迫した。
氏は、通常のバス路線を走ると交通渋滞に巻き込まれる恐れがあると考え、また男を興奮させないようにと交通量の少ない山間の裏道を約10走り稲佐署へ向かった。乗客らから通報を受けた長崎県警察本部はパトカーで追跡、その間、バスの車内では男がさらにもう一度女性乗客に灯油をかけるなど緊迫した状態が続いていた。
同6時頃バスはパトカーなどに包囲され、同市北西部の県道で停車した。男が「稲佐署の刑事を呼べ」と警察に要求したため、刑事2名がバスの中に乗り込んで、男の説得にあたったところ、同6時45分頃男性乗客は解放されたが、依然氏と女性乗客は人質のままであった。しかし同午後7時過ぎ、男は警察の説得に応じてバスから降り、氏と女性乗客を解放した。
((社)日本バス協会推薦)