6 法律扶助協会の課題
1. 司法制度の不可欠な一部
平成10年3月の法律扶助制度研究会報告書は、法律扶助制度の整備・充実を国の責務とした点で画期的な内容となっています。
法律上の困難に直面した人がだれでも、資力の有無にかかわりなく適切な法的助言や、弁護士による裁判手続きの援助を受けることができれば、国民生活から悪徳商法の被害や予期しない不利益をなくしていくことができます。この点で、法律扶助は国民のための司法の不可欠な一部です。
2. 援助範囲の拡大
法律扶助は伝統的に紛争解決のための補完的制度としてみられてきましたが、社会の進展とともに弁護士や裁判所の役割も、いままでになかった要素を加えてきています。法律に疎い人が詐欺的商法の被害者にならないためには、気軽に相談できる、身近な相談機関が必要です。紛争の解決から紛争の予防ヘ――法律扶助は司法の役割の広がりとともに、その対象とする援助の範囲をひろげていく必要があります。経済的弱者だけでなく、高齢者、未成年者、障害者など、社会的に弱い立場の人の利益を守っていくことは、法律扶助の課題です。
法律扶助制度研究会報告書の対象は専ら民事法律扶助に集中されていますが、国民生活の法律的援助という観点からは、逮捕された人への弁護士の援助、少年事件への弁護士の付き添い、難民認定をうけようとする人の援助など、さまざまな「弁護士へのニーズ」に対応する公的制度として法律扶助を育てていくことが必要です。
3. 援助方法の工夫と開発
いままでの日本の法律扶助は、一般の弁護士の提供するサービスを中心に構想されてきました。今後もこの流れは続くものとみられますが、紛争の内容によっては法律扶助専門の事務所を作ったり、弁護士の少ない地域では出張制やOA機器を活用した援助など多様な援助の方法を工夫していく必要があります。
4. 利用されやすい制度に
法律扶助の対象となる人は、資力に乏しいだけでなく、社会的にも心理的にも不安定な状態にあることが多く、こうした人でも容易に制度を利用できるような工夫が必要です。
そのためには、社会福祉や行政との緊密なネットワークをつくり、さまざまな援助機関と協力しながら援助をしていくことが必要です。
5. 国民の目に見える制度の運営
法律扶助制度は、直接これを利用する人はもとより、普段は援助対象とならない人にも十分に知られる必要があります。制度が活力を持って運営されていることが、社会的な安心感をもたらすからです。そのためには、法律扶助を行う機関は普段からその運営状態を広く国民に伝えるとともに、自主性をもった、独立した事業体として活動してゆくことが必要です。