2 受任弁護士の選任と費用の支払い
日本の法律扶助は、開業している弁護士に私選事件と同様の方法で事件処理を求める、ジュディケアと呼ばれる方法をとっていますが、扶助が決定された事件には弁護士会のまとめた名簿などから、弁護士が選任されます。ただし、扶助された人が特定の弁護士を知っており、その弁護士が法律扶助の事件として受任することを承諾した場合には、その弁護士が受任できます。弁護士がある事件について、法律扶助に該当するとして協会支部に扶助を求めた場合も同様です。
受任弁護上には、受任の時に訴訟費用(手続きのための実費)と、着手金が支払われます。訴訟費用額は係争額が500万円の場合で3万5千円、着手金額は20万円となっています。法務省の定めた補助金交付要領では、受任弁護士に支払うべき費用、報酬の基準は日本弁護士連合会の定める報酬基準規程の範囲内とされていますが、協会は報酬基準を別に定めており、この基準では着手金の上限は22万円(平成9年度より)で、日本弁護士連合会の定める報酬基準規程とは異なる取扱いとなっています。
*訴訟援助が得られない場合は、裁判所におさめる印紙代を追加する
*仮差押や仮処分が必要な場合には、保証金の支出又は支払保証がされる
受任弁護士には民事訴訟法による訴訟救助の申請が義務づけられており、訴訟救助が却下された場合には訴状に貼る印紙代(訴額500万円の場合は32,600円)が追加されます。この他に、訴訟の途中で鑑定費用や仮差押えなどの保証金が必要になった場合には、追加支出されます。なお協会では多くの支部で第一勧業銀行の協力により、法律扶助の保証金の供託に代わる銀行の支払保証を採り入れています。
事件が解決して成果があった場合には報酬金が決められ、扶助を受けた人が利益を得た場合には受任弁護士に報酬金が支払われます。その額は成果が500万円の場合、その1割にあたる50万円を基準として審査、決定されます。扶助を受けた人が自分では支払うことができない場合には、これも立替えられます。協会が報酬金を立て替える割合は終結した事件の2割程度となっていますが、金銭の支払いのない離婚事件などの報酬金の立て替えが多くなっています。
3] 立替金の償還
協会が立て替えた資金は、現在の制度では事件の成果にかかわりなく、全額返還を受けることが原則となっています。
法務省の定めた「法律扶助立替金の償還並びにその猶予及び免除に関する取扱要領」は、事件の終結決定の後3年を経過した場合において、扶助を受けた人が生活保護法の適用を受けている場合、及びこれに準ずる程度に生計が困難であると認められる場合には立替金の残額を免除することができるとしていますが、これには1件ごとに法務大臣の承認が必要であり、実際の免除率としても低い水準にとどまっています。
立替金の返還は扶助の決定後開始され月額1万円程度返還されることになっています。
事件が終結した場合には立替金の残額について返還の方法が定められ、一時に返還ができない場合には分割返還、終結時に返還できない事情がある場合は返還が猶予されます。