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Q2 しかし、これまで借りていた者の居住の安定性が害されるのではないか。

 

A:定期借家では借家の供給が増えるから、借家人の選択の可能性は大きくなる。再契約を拒否されても、相応の家賃を払えば入居できる住宅が近隣にあるはずだ。

 

Q3 契約のさい、家賃が値上げされる。高齢者追出しなど、家主横暴を許すのではないか。

 

A:一度借りたら、値上げを認めないというなら、最初に高額の権利金を払うべきである。さもなければ、新規に借りる者と同じ家賃を払うべきである。これでは所得が増えない高齢者が可哀想といわれても、若者も高齢者と競争して住宅を探しているのであって、高齢者だからといって代価をまけなければならない商売はどこにもない。家賃を値上げする家主は悪徳ではなく、市場原理に従っているだけである。契約は対価関係に立たなければならない。借家人の敵は家主ではなく、借家人なのである。低所得者の保護は国家の任務であって、これを家主に転嫁してはならない。

現行制度では一度借りた者を保護するので、支払い能力が低いと見られる高齢者などはかえって借りにくい。定期借家なら、高齢者にも貸そうという家主が増えるのでかえって高齢者のためである。再契約時に家賃が値上げになるか値下げになるかは市場が決める。定期借家で貸し渋りが減れば、借家希望者が増えることを勘定に入れても、供給増で、家賃なり権利金は下がると予想される。再契約のさいに市場を無視して値上げする家主はいない。

家賃上昇時には、再契約のさいに値上がりした家賃を払えずに退去しなければならない借家人が出る。気の毒であるが、新規に住宅を求める者も、支払い能力が同じであればその借家に入れないことは同じである。

 

Q4 一度貸して、建替えなどのために立退きを求めようとすると、判例上、借家権価格と称して、地価の30%くらいの支払いを求められる。根拠は、借家人も地価上昇に貢献しているという点にある。家賃を市場に合わせて値上げすることを認めない判例は同様の考え方に立つ。定期借家では、この借家人の権利が奪われ、地価上昇の利益はすべて土地所有者に帰属する。これは不合理ではないか。

 

A:市場に沿った家賃の値上げが認められず、最後には立退料を取られるのでは、貸しても大損である。これは契約は対価関係に立つという大原則に反している。

地価上昇はそのあたり一帯の発展によるものであって、個々の借家人の居住とは関係がないし、では、地価下落時には借家人がその一部を負担するかといえば、負担するはずはない。私有財産制度をとっている以上、地価上昇の利益はとりあえずは土地所有者のものである。土地所有者の努力に起因しない地価上昇分は本来国家が100%吸収すべきであるが、いずれにせよ借家人のものではない。高額の立退料を支払わせる判例は、土地所有者の財産権を侵害しているので憲法29条違反である。

 

Q5 既存の借家人が定期借家に切り替えられてどんどん追い出されるのではないか。

 

A:定期借家制度はこれからの借家契約に適用される。しかも、今後も従来型の普通借家契約を締結してもよい。したがって、既存の借家人は安心のはずである。

 

Q6 従来型の普通借家人が更新のさいに家主に騙されて定期借家契約を結ばされ、次には期限で追い出されるのではないか。

 

A:家主がそんな契約をしても、借家人が騙されたと頑張れば、家主は定期借家契約の有効性を証明しなければならないし、訴訟で明け渡し判決をとらなければならないから、そんなに簡単に偏し通せるものではない。

 

 

 

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