7. 結びに代えて
1. 要約
● モニタリングの空白:経営者企業のエイジェンシー問題
LFOの経営者企業、救済オプションとQの負の選択、1987年の事後のパフォーマンス低い。
● 負債選択;高い期待収益θ、社債の選択、低いθ、救済オプション付き負債
● 負債選択と効率性;救済オプションなし負債の選択=高い効率性、
● 1980年代の最大の変化、救済オプション付負債の供給を前提として、企業に負債選択のオプションが与えられると、システマテックに低収益・高リスク企業が、救済オプション付負債を選択する。しかも、優良貸し手を失ったMBは、これらの企業に負債を供給する。これが、90年代の不良債権問題の要因。
2. 展望
外部環境の変化;90年株価低落・91年地価低下、93年円高
1) 企業金融の分化;高い期待収益を持つ企業・輸出向組立産業
● 資金調達パターン;内部資金とPublic bondによる資金調達;バブル期のイクイティ関連債の普通社債への転換(国内・海外)、これは銀行保証なしのPublic Bond。
● モラル・ハザード;資本市場と生産物市場による規律。
● Arm's lengthへ
2) 中程度の期待収益の企業=素材産業型産業
● 社債から借入へのシフト。
89年ワラント・転換社債のピーク・93年に借入への振り替え。
● モラルハザード;資産の増加テンポ小さい、リストラの進展・MBによる規律・生産物市場の規律。
● 銀行の戦略(貸出高水準・清算コスト上昇・メインバンクレント安定的)
3) サービス産業(建設・不動産)
● 資金調達;借入の増大
● モラルハザード;追加融資・典型的な事後的soft budget constraint・生産物市場の弱い規律
● 清算か救済かの決定要因;貸出額(B)・清算コスト(ε)・期待収益(γ)・名声(ω)
● 銀行の戦略;救済から清算へ;貸出高水準・清算コスト上昇vsメインバンクレント低下・(低位の将来収益が明らかとなった)、名声の価値低下
● 近年の清算の事例;、東海興業(北拓)・大都工業(さくら)、多田建設(日本信託)、ヤオハン;ただし清算は中規模(Bの水準が中程度)。
● 銀行の側に救済のインセンティブは低下しており、今後、ε、ωがさらに変化すれば、救済から清算が全般化する。