II 第1の課題;
1. はじめに:企業金融の構造変化
● 借入依存から、減量経営、エクイティファイナンスヘ
● MBのガバナンスにおける役割後退
● 1980年代の企業金融に関する通説的理解
<モニタリングの空白>経営者企業のエイジェンシー問題
持ち合いによる資本市場からの圧力の緩和、資金調達の変化、負債の拘束(bonding)の弱化、モニタリングの空白状態。
経営の規律の低下・soft budget constraint
エクイティ・フィナンスによる過剰投資(内部者にのみ私的便益を生み、株主に利益を生まない投資):池尾(1993)、Horiuchi(1995)、経済白書(1998)
<モニタリングの低下>・Asset Substitution
銀行の組織変化・土地担保金融への傾斜=モニタリングの低下、企業の負債調達におけるモラルハザード(情報開示の回避・虚偽の情報の申告)
課題: 1980年代後半の負債選択に焦点
1. 80年代後半における負債調達は、いかなる要因によって決定され、この決定にメインバンク関係、企業のガバナンス面の特質はいかに作用したのか?
2. 80年代の負債調達の選択は、バブル崩壊後の企業パフォーマンスに有意な差を生み出したのか?
メッセージ:
● 事前的:期待収益の高い企業が社債を選択という意味で合理的。
● 事後的にも、社債に依存した企業の効率性が高い─MHがシステマテックに発生したとは見られない。
● 銀行のモニターの水準に何ら変化が生じなくても低い期待収益の企業が蓄積。
● もう一つのシナリオ;初期条件:MB関係の全般化=救済の規範化・救済オプション付負債の提供─資金調達手段の選択が可能─期待収益の低い投資プロジェクトをもつ企業が救済オプション付きの負債を選択─この傾向を、優良貸出先の減少に直面し銀行の貸出行動が増幅した。