逆に言うと、抜擢というのはある意味でメカニズムではないというか、そういうことがまだでき得るシステムなのか、そうでないのか。あるいは、うまくいっているからたまたま抜擢ができるのか、うまくいっていない企業だとそういう抜擢なんていうのはできないのか。つまり、今、確かに日本の企業は、金融機関も含めて、何らかひとつ脱出していくには、例えば抜擢というのは必要だと思うのですが、これがメカナイズできるのか。これはあくまでも最後の今後の課題ということでおっしゃられたので、ぎりぎり質問するつもりはないのですけれども、(笑)一つの傾向として。
宮島 それは非常におもしろい点で、これもペインフルな仕事で、大学院生と一緒に今やっているのですけれども、問題の発端はこうだったのです。こうやって一生懸命計算していきますと、社長の平均年齢がどんどん上がっていて、不健全なことが起きているのだなと思いながら見ていたのですが、90年代になるとちょっと下がるのです。もうちょっと調べていくと、いくつかの企業で若い取締役メンバーを登用するというケースがある。それをさらに調べていくと、何人抜きとか、何段飛びとかというのがあって、確かに三菱重工とか三菱電機だと、上席専務などが社長に昇任するということになるのですが、例えばホンダとかソニーとかというのは、それとは異なった抜擢人事を行っている。これまで申し上げたとおり、銀行から自立して、その意味では外部からのコントロールが弱くなった企業が日本の大企業の中のかなりを占めているという状態が80年代後半にはっきりしてくるのですが、そこの中で企業が活力を維持していくメカニズムとこの抜擢との間に関係がありそうなのです。そこを少し調べたらいいのではないかと思って、今、内部者の中でどういう順序で社長が選ばれているか。つまり、何人抜きかという一定の基準をつくって、4人抜き以上か5人抜きだったか忘れてしまいましたけれども、それで抜擢と定義し、抜擢が起きるメカニズムを説明するというテーマと、それから抜擢が起きたらパフォーマンスがよくなるかどうかをテストするというテーマ、それから抜擢とパフォーマンスの間を結ぶような戦略変数、リストラをしているとかの戦略変化、こういうものを結びつけて、今、一生懸命作業をやっています。300社ぐらいピックアップしてデータベースをつくっていますので、いずれご報告できる機会があると思います。
C 期待しております。
宮島 ありがとうございます。