し、企業が合理的に行動しても、日本のある種の条件、メインバンク関係が全般化していて、なおかつ規制緩和が進むということが起きると、結果として銀行の顧客の間には期待収益の低い企業というのがどんどんたまっていくということが知らず知らずのうちに起きていたのだというのが、この論文のメッセージです。
それから、資本市場による規律、これはちょっと難しいですね。お手元に配っているものの9ページをちょっとご覧ください。9ページは時間の関係で説明をスキップしたのですが、おっしゃられるとおり、私の見るところ、建設と不動産のところが最大の問題なのです。外部環境が変化して90年代にどうなったかというと、高い期待収益を持つ企業は、主として輸出向け組立産業のところです。デジタル革命に乗れているのは日本の電機メーカーだけみたいな言い方をされているわけで、マクロのTFP推計などを見ても、電機機械は、最近悪いですけれども、90年代前半をならしてみれば、唯一いいわけです。自動車も健闘していると考えられると思います。素材産業のところも、極端に悪いとは考えられなくて、メインバンクによる規律というのは依然としてワークしていると思うのですが、サービス産業のところが最大の問題です。ここのところが特に悪かったのは91、92、93年の追加融資の結果です。つまり顧客の収益が悪くなったときに、さらに追加融資を試みて、さらに悪くなっている。なお傷口を深めていったというところがあったわけです。ここが現在どうなっているかが焦点だと思います。そこでは、市場による規律が進行している中で、多分メインバンク関係自身が転機を迎えているのではないでしょうか。
レジュメにも簡単に書きましたけれども、要するにメインバンクが清算するか、救済するかを決めるのは、多分いくつかのファクターがあって、一つは貸出額がどれくらいか。トゥー・ビッグ・トゥ・フェイル(too big, too fail)というのはかなり大きな要因ですから、貸出額がどれくらいか。それからもう一つは、清算したときにどれくらいコストがかかるかということで、これは外部環境に依存するわけです。それから、その産業自身の期待収益があって、例えば建設みたいに公共事業が膨らまないということが将来予測されていれば、その産業自体への期待収益は低い。もう一つ大きいのは、メインバンク関係の歴史から言うと、リプテイション・イフェクト(Reputation Effect)がどうなっているかということで、今までは救済するというのはある種の社会的規範だったわけです。もし救済しないと、3つの方向からペナルティーを受ける。1つは同業他