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あるメディアにいらっしゃる方は、ぜひこういうペインフルをやっている研究者のためにも、決算期は統一させてほしいとアナウンスしてください。もし全企業を3月末決算にしてもらえれば、こういう計算はすごく楽になるのです。というのは、要するにQの計算は、期末の株価をとります。期末間の株価をとって、今言ったようにA社とB社のどっちが高いビジネスチャンスを持っているかに関する市場の評価を捉えようというものですけれども、決算期が違っているため─3月が6割ぐらいで、あとの4割の企業は11月に分布していますから─企業の株価が上がっているときとか下がっている年次の場合、期末評価を年度中でとってしまうと、すごく大きなノイズになってしまうのです。企業の株価が非常に上がっている局面、80年代の後半、87、88、89とか、それから株価が急激に下がった90、91というところは、Qは通常の計算の仕方だと多分ノイズがあって、ほとんど意味を持たない。だから、期末の株価でなく、株価をとる月を決めてしまうとかの操作を加えないと、あまり意味を持たない。こうした特性は、やっていくうちに大体見当がついて、そこで我々としては比較的株価が安定していた84年末をとってQを計算したわけです。それで、84年の時点で市場がそれぞれの企業についての将来収益をどう評価しているかというのを見て、この評価と89年末の実際の負債決定の結果とはどういう関係にあるかを見たというのが、ここで試みた操作なのです。

それから、土地担保融資は、いくつか申し上げなければいけないことがあるのですが、この文脈では、我々は土地担保融資を強調するという見方自身を否定しているわけです。ですから、土地担保融資というのはリスクをちゃんとカウントしているから、そんな非合理なことではないのではないかというAさんの見方と我々の見方は一致しています。ただ、おっしゃられるようなことが問題になっていた文脈というのは、一方では銀行ががけっぷちの土地まで10億円の担保をつけてしまったとか、このようなモラルハザードがあったというのがよく言われていることです。確かにそういう事態がないことはなかったのかもしれないと思いますが、僕の論文が強調しているのは、それを大きな事態の説明としてメインストリームだと考えるのはどうも間違いで、むしろ企業は土地担保融資で少なくとも事前的には合理的な貸出行動をとった。多分、土地担保も事前的に過大評価したわけではなくて、担保に7掛けかなどで事前的にはお金を正しく貸し出した。モニタリングが急激に弱くなったということも言えない。リスクが高いところは多分少し金利を高くつけて、織り込んだだろう。そういうことでちゃんと銀行が合理的に行動

 

 

 

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