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免れていないという企業ですと、資本市場で高い評価が得られなくなる。そうすると、資金調達コストが高くなって、収益性が低下するということになってくるわけです。収益性が低下してくると、リストラを強いられる。リストラを強いられると、従業員の首をある程度切るわけです。首を切る経営者は、さっき見たように、内部者による経営者の交代確率は上昇していますから、恐らく資本市場というのは内部者の規律メカニズムを介しながら、企業の経営者に対して圧力を加えているようになっていると考えられるのです。そういう意味では、資本市場のメカニズムというのは、一方で内部者を中心とした規律のメカニズムを介しながら企業経営者を規律しているし、他方では借入銀行に依存している企業部門があって、ここの部分はメインバンクの規律が依然としてワークしていると考えられます。そう考えると、日本の企業のガバナンス構造というのは、分化しながらも、依然としてそれなりにワークしていると考えたほうがいいということです。現在、株式相互持ち合いは批判を受けていますけれども、こういう感じだと、株式市場による規律を意図的に導入する必要は、今までの分析からすると必ずしも強くはなくて、市場による規律は十分ワークしているように考えることができます。

ただ、内部者によるコントロールのメカニズムというのは、ある企業では、例えばソニー、あるいはホンダですと、ある一定の状況になってくると内部者のメカニズムが働いて、抜擢みたいな人事が行われるメカニズムがあるわけですけれども、例えば三菱重工などの三菱系の企業ですと、内部者による革新的な選任のメカニズムはあまりワークしていない。この差が何によって規定されているかは、今後検討すべきところはありますし、この内部コントロールメカニズムをさらに洗練するということは、今後の大きな課題としては残っているだろうと考えております。ちょっと長くなりました。多少ややこしいこともお話しして、あるいは皆さんの中には苦に感じられた方もいらっしゃると思いますけれども、私の報告は大体これくらいにいたします。

 

 

 

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