辞めるというルールがどうも定着している。ですから、よく言われるこのルールというのは、日本の長い歴史で見てみますと、どうもオイルショック以降定着し、しかも強まっているということです。
次に、外部者による交代、つまり業績が悪化して外部者が介入しているというケースです。今までの話の筋からいけばメインバンクが介入しているということですが、この関係については、一つの予想はメインバンクは株主の代理人になって介入しているのではないかという見方がありますが、これは支持されません。投資収益率と経営者の交代というのは、事実上無相関です。丹念に見ていきますと、1950年代だけやや弱く見られるのですけれども、それ以降は明快な相関はありません。それに対して、銀行にとって最も重要なインタレスト・カバレッジ・レシオとは一貫して相関があります。ですから、ある意味では当然ですけれども、銀行にとってみれば利払いができないようなデフォルトに近づいてくれば、当然介入して経営者の交代を促すということです。ただ、インタレスト・カバレッジ・レシオの影響は、70年代からやや低下していくということです。ところで、先ほど言いましたように、状態依存ガバナンスのユニークな点は、銀行の企業に対する影響がある閾値を越えた点だけで起きるのではない。つまり、普通の負債契約だと、デフォルトリスクが高まったというところで銀行の介入確率が急激に上昇するという見方ですけれども、状態依存ガバナンスは、それよりも前の時点から徐々に銀行の介入が強まっていくという見方です。
そういう見方で変数を少し工夫して計算してやって、これがいつできたのかというのをチェックしますと─どうやってやるのかというのは興味があったら読んでいただければありがたいのですが─最も典型的にできあがったのは、どうもオイルショックの後のようです。それまでは、むしろ業績が悪くなるまでは銀行は介入しないという状態だったわけですけれども、60年代後半ぐらいから線型の関係が次第にできあがって、70年代オイルショックの後は最も典型的に、業績が中程度に悪いと社長は代えないのだけれども重役とか専務を送る、もっと悪くなると社長を送るというように、業績に応じて介入度を強めていくという関係が最も典型的に観察できます。ですから、メインバンクがガバナンスで最も影響力を持った、そしてそれが目に見える形で最も典型的にワークしたのは、どうも歴史的に回顧してみる限り、オイルショックの後だと考えられます。あの局面で、しかもあの局面だけだと考えたほうがいいというのが、3番目です。