つまり社債に依存して、その後効率性が悪かったというようなことは、必ずしも確認できなかった。ですから、80年代の最大の変化というのは、先ほどの繰り返しになりますけれども、救済オプション付きの負債の供給が、企業と銀行との間である種の規範みたいな形で形成されていると、企業が負債選択のオプションを持つと、セルフ・セレクションが働いて、システマティックに銀行の顧客にリスクが高いか将来収益の低い企業が蓄積されていく。しかも、優良借手を失っていったメインバンクに、もちろんリスクの高いところには高い金利が要求ができますから、それに貸し応じてくる。これが90年代の不良債権問題の、要因というのはこっちが強いのですけれども、通常言われているのに加えて、一因であるのではないかというのが、一つ目のメッセージです。
次に、冒頭でお話しした二つの課題の2番目のほうに入ります。
2つ目はどういうことをやったかというと、経営者の交代と企業のパフォーマンスの関係です。今度は、企業の経営者の交代と企業のパフォーマンスの関連を見てみようということです。これは両方のやり方があるのですが、つまり、交代した後パフォーマンスがよくなるかという問題もあるのでしょうけれども、これから問題にしようとするのは、企業のパフォーマンスが悪くなったときに、システマティックに経営者を交代できるようなメカニズムが日本で作用しているかどうかをチェックしてみようということです。先ほど言いましたように、1980年代後半バブル期に日本企業のコーポレート・ガバナンスが変化したのではないかというのは、よく言われるのです。ただ、依然としてメインバンクのモニタリングは有効だという企業もあるし、特に海外を中心にいくつかの研究があります。そこで、どうなるかというのを定量的に検討しようということです。
基本的な分析の戦略というのは、経営者の交代、それから外部派遣役員、これはちょっとだけなのですが、経営者の交代と企業のパフォーマンスに関する同一の計測式を同一のサンプルについて異なった計測期間で計算してみる。それで、時期的な変化を見て、80年代の位置、あるいは90年代前半の変化を考える。データですが、これは直近のことをやるには必ずしもふさわしくないのですが、高度経済成長期からの変化を通して見たかったので、1957年、64年、72年の3期について、製造業の資産で見た上位150社、これで204社のプールしたデータをつくりました。そこから、経営者の交代を全部調べると大変なので、最低サンプルは100社欲しいというので半分にしようというわけで、ランダムに100社を抽出します。それでデータをセットする。その上で、期間の出発点