日本財団 図書館


も高くても、企業は金利は支払わないといけない。それは、エクイティーとは違う特質であるわけです。そういう負債の拘束効果と結び付けてメインバンクの特質を求めるという見方がありまして、例えば池尾さんなどはこっちの見方のようです。もう一つの見方は、スタンフォードの青木さんらが提唱した見方で、僕も一緒に仕事をしたことがありまして、大きく影響を受けております。僕自身はこの状態依存ガバナンス、英語ではcontingent governance structureと言うのですが、この見方に意識的に立っています。この見方は、基本的に負債契約というのは、一方の極、つまり負債の拘束効果を考える見方では、デフォルトの直前まではコントロール・ライト(経営権)というのは内部者にあって、デフォルトになると、契約に書かれているように、コントロール・ライトが内部者から債権者に移って、債権者が清算するなり、別の人に任せて再建するなりを決めるという見方です。それに対して青木さんの見方というのは、そのデフォルトに至る前のところにある一定の閾値があって、そこまで企業の収益が低下してくると、貸出をしている銀行が一方でモニタリングを強めながら、業績が再び回復するようにと救済融資を行うという関係がある。これが日本の企業、銀行関係にユニークな特質だと見るのです。そういう見方に立ちますと、銀行からの借り入れというのは、事実上業績が悪くなったときに、完全にデフォルトになる前に銀行が救済パッケージを提供してくれると同時に銀行が介入を、モニタリングを強める。そういう性格を持つというとらえ方ができるのです。

2番目のところは簡単に。1970年代前半くらいまではほとんど日本の企業は、ホンダまで含めて─トヨタは比較的早くトヨタ銀行化しますけれども─どの企業も外部負債の依存度が高くて、比較的同質な構造を持っていた。ところが、減量経営が進んだ1970年代後半以降から、企業の負債依存度が低下し、企業と銀行の関係が次第に分化していくという話をしております。

3ぺージの救済オプション付き負債契約のモデルというところをちょっと見ていただけますでしょうか。これがエッセンスなので、この辺は飛ばしてください。どんどんいってください、何かややこしいことが書いてありますから。ここがエッセンスなのですが、1個目の課題で問題にしようとするのは、企業にとっての負債選択です。企業が設備投資、あるいは投資機会を持っていて、そのときに内部資金では足りない。そうすると、外部から資金を調達しなければいけない。ただし、ここでは増資と負債の選択問題は無

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION