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1つ目です。それからもう1つは、これはまだやられているわけですけれども、80年代の負債選択が、事後的な、バブル崩壊後の企業のパフォーマンスに有意の差を生み出したのか、これを検討してみようということです。

以下細かいことをやるのですけれども、結論を先に言ってしまいますと、次の4点が最初のほうの論文で私が主張したかった点です。1つ目は、事前的に見ますと、事前的に見るというのは、後でちょっとモデルを説明してやりますけれども、基本的にはバブルの直前の時点の企業のリスクと、それから株式市場が評価した企業の将来収益から見ますと、期待収益が高い企業、つまり将来もうかる可能性が高い企業が社債を選択するという意味で、合理的な選択を行っていたということが、定量的に確認できます。ですから、リスクが低いか、あるいは将来収益が高い企業は、システマティックに社債を選択し、むしろリスクが高いか、将来収益が低いと自ら判断している企業は、銀行借入に依存しているということが確認できます。

2番目に、事後的に見ますと、事後的にということは、バブル期を一つの時期と見まして、1980年代後半の負債選択を1990年代前半の効率性と関連させてみる。つまり、1990年代前半の効率性、パフォーマンスを1980年代末の負債構成に回帰してみると、社債に依存した企業の効率性が高いわけです。ですから、その意味で言いますと、堀内さんたちの研究というのはやや統計的にも問題があって、実際にはモラルハザードがシステマティックに発生したとは見られない。経済白書においては、87年の負債選択は効率性の悪化をもたらした、エクイティーファイナンスは効率性の悪化をもたらしたとなっているのですけれども、後で説明しますが、87年は確かにそういう側面はあるのですが、バブル期全体で見ますと、負債選択というのはモラルハザードがシステマティックに起きたとは見られない。そうすると、何も問題はなかったのではないかということになるのですけれども、実はポイントはここにあって、これが第3点目の力点です。80年代後半に実際に起きたことは、企業の側が自らセルフセレクションして、自らリスクの高い、あるいは将来収益が低いと考えると、銀行借入に依存する。というのは、後で説明しますけれども、メインバンクからの融資というのは何かあったときに救済オプションがついている融資なわけです。ですから、助けてもらえるということを前提にして、自らリスクの高い、あるいは将来収益が低いと考えた場合には、借り入れに依存しようとする。逆にもう大丈夫だ、これならよほどのことがない限り、デフォルトにな

 

 

 

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