う見方を提示しております。つまり、エクイティーファイナンスした企業のその後の効率性が低いということを実証して、これは過剰投資だったのではないかという議論を展開している。
もう一つ、1980年代後半の事態についてよく指摘される主張というのは、銀行のモニタリングが低下したのではないかということです。そのときによく引き合いに出されるのは、1970年代末に、マッキンゼーだったと思いますが、そのコンサルティングを続けて、住友銀行がまず最初に組織改革をしたと言われています。1970年代後半は減量経営が進んでいまして、その前は銀行は7割ぐらい大企業に貸していたわけですけれども、減量経営が進むと、銀行は中小、リテールに出ていかなければいけない。それから海外業務が増える。そこで、銀行はこれまでの機能別組織から事業部組織に転換した。国際部門とリテールと大口の3つに分けて、今まで機能部門で営業と別個に存在した審査部を事業部門の中に位置づけた、このことによって銀行の審査部が弱体化した。これはまだ完全に実証していないから僕もよくわからないのですけれども、というふうに言われております。銀行の審査部が縮小してくると次に何が起きるかというと、リスクを的確に評価できないために有担保原則を強め、そして土地担保融資を行ったというのが、よく語られる話です。それに、借り手の側のある種のモラルハザードが加わって、それが80年代の後半の銀行貸出の増大につながったというイメージであります。そうしたイメージはかなりの方々の間で共有されているイメージだと思うのですが、これをもう少し経済学的に詰めて考えてみようというのが、1つ目の論文でやったことなのです。
今までの説明というのは、基本的にはエクイティーファイナンスをやった後の企業の効率性を見て、やった企業のほうが効率性が悪いという結論を出してきているわけですが、それは事後的な分析であって─しかも、そのファクトファインディング自身ちょっと怪しいという問題があるのですけれども─仮にそれが正しくても、事前的に見ればエクイティーファイナンス自身は、そのときの企業の経営者にとってみれば合理的な判断であったという可能性はあり得るわけです。そして、外生的な要因で事態が変化して90年代には企業の収益が悪化しているわけですが、結論から言いますと、バブル期にエクイティーファイナンスに依存した企業の効率性が悪くなったとも僕の計算では言えない。ともかく一つの問題は、バブル期の負債調達が一体いかなる要因によって決定されたかを、当時の経営者の事前的な負債選択の問題として検討してみようというのが、