を生まない。そういう投資プロジェクトがあり得るわけですが、この選択をいかに有効に阻止するかというのが大きな問題であるわけです。これが、一般的に経営者のモラルハザードをどうやって防ぐかというときに、争点となっていることであります。
そこで、より具体的な問題を以下考えようとすると、問題は2つあります。1つは、企業の経営者のペット・プロジェクトというのは、今言いましたようなプロジェクトだと考えてください。つまり、内部者にのみ利益を生んで、株主から見ると、株価が下がってしまう、つまり投資収益率が低く、経営者あるいは内部者にのみ利益を保証するプロジェクトです。こうした投資プロジェクトが、もしかするとバブルの時期に大量に選択されたのではないかという可能性があるわけです。これをチェックしてみようというのが、1つ目の課題です。
それから2つ目は、先ほど言いましたように、もともと日本では株式相互持ち合いが進展していて、資本市場からの圧力が小さい。その上で、企業金融が変化すると、メインバンク離れが進む。銀行が有効に企業経営に対して影響力を与えられなくなる。そうすると、日本の企業では経営能力を欠く、あるいはさっき言いましたエフォート・アバージョンですが、努力水準の劣る経営者がその地位に居座るという事態が起きているのではないか。これをチェックしてみようというのが、2つ目の課題になるわけです。
以下、私がちょうだいしている時間はあと40分ぐらいです。お手元にお配りしてあるものは、いまの2点について比較的テクニカルな統計分析を行っています。時間の許す限りで細かいことも説明しますけれども、以下、基本的な筋をご説明して、どんなことをやってどんな結論を引き出してきたかということをお話ししたいと思います。
1つ目の課題、つまり1980年代後半に、企業にとっては外部資金の調達が容易になって、しかも、エクイティーファイナンスと言われたように、内外の資本市場、転換社債とかワラント債を使うと、ほとんど資本コストゼロのような資金調達ができるという環境があった。そういうもとで、企業は一言で言えば過剰投資をしたのではないかという議論は、しばしば指摘されているところです。繰り返しになりますけれども、そのロジックは、持ち合いで資本市場から圧力がない。しかも、銀行の拘束力、銀行の影響力が低下してくる。そうすると、エクイティーファイナンスによって過剰投資が発生するのではないかという見方。この見方というのは、例えばしばしば金融問題に関して発言されている池尾さんとか、東京大学の堀内さんとか、あるいは経済白書の今年度版はこうい