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今日お話ししようと思っておりますのは、あらかじめお知らせした題目より、もうちょっと広いトピックで、近年の企業金融とコーポレート・ガバナンスの変化を簡単に検討させていただいて、これはちょっとアカデミックスの範囲を超えるかもしれませんが、企業システムに関して、21世紀の展望について若干のコメントをつけさせてもらうというところをねらっております。

今日の報告のねらいはどういうところかというと、お手元にお配りしてありますレジュメの2ページ目を開けてください。しばしば語られるように、日本の企業システム、あるいは経済システムは、アメリカのシステムと異なった特徴を持つという点がかなり共通の認識になっておりまして、そうしたシステム的な特徴が高度経済成長期あるいはオイルショック後の速やかな調整に大きな役割を果たした、そのミクロ的な基礎になったというのも共有された認識だと思います。ところが、1980年代後半、あるいは特に1990年代になってから、この日本的な企業システムというのが制度疲労を起こしてきたという議論が、これもまた逆の方向で多くの方々に共有され始めてきた。一方で日本の特徴であって、その特徴が非常にポジティブにワークした局面があったのが、1990年代になってからは急にネガティブに評価されるようになった。この間の変化を的確にとらえてみようというのが、私の今考えている問題意識になります。ですから、高度経済成長期に確立した日本企業システムについて、80年代に何が変化したのか、その変化はバブルとどういう関係にあるのか、そして1990年代に入って日本の企業システムは現在一体いかなる方向に向かっているのか、こうした問題を考えてみようというのが、ここでの問題です。その場合、日本の企業システムといいましても、例えば雇用関係とか取引関係とか、いろいろな側面があるわけですけれども、ここでは主として企業金融とコーポレート・ガバナンスと言われる側面に焦点を当ててみようと思っております。

そこで問題にされているのはどういう事態かといいますと、例えばアメリカですと、株式市場の圧力が強い。もう少し具体的には、テイクオーバーの脅威がある。この圧力が経営者を有効に規律するメカニズムとなっている。ですから、アメリカの経営者の規律のメカニズムは、基本的には資本市場に依存しているというのが通説的な理解です。それに対して、日本は株式相互持ち合いによって、株式市場の圧力が緩和される。そうすると、経営者がモラルハザードを起こす可能性が出てくるわけですけれども、このモラルハザードに対して、少なくとも1980年ぐらいまでは、メインバンクシステムが経

 

 

 

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