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別添参考資料2

 

補論:中国における企業破産

-全国的動向と東北3省の現状-

国際研究奨学財団

吉田 均(研究員)

 

1、 企業破産の概要

 

96年現在、7万社の国有企業の内、3分の1強にあたる2.6万社が赤字である。利潤総額が417億元に対し、赤字総額は727億元であるため、赤字が310億元も上回っている。このため国家財政から328億元、地方財政から281億元の赤字補填がされており、赤字企業処理は急務の課題となっている(注1)

中国では、赤字企業対策として、企業の破産処理と吸収合併を促進している。しかし、企業が負担していた社会保障などの公的整備が遅れ、かつ雇用と債務問題の解決を最重要課題としているため、現在は企業破産より優良企業による赤字企業の吸収合併が奨励されている。合併先企業は吸収された企業の労働者や債務の引受に責任を有するものの、銀行債務に関しては利息免除や元本の5年間分割返済等の優遇措置を設けている。

一般的にいわれている企業破産の問題点としては、次の3点があげられる。まず第1に、日本のシステムとは異なり、政府の方針に従って選ばれたものだけが破産できるシステムとなっていることである。具体的な企業選択に当たっては、国有銀行本店の審査批准が必要なため、省や市では割り当てられた破産準備金の枠内でしか企業破産を認めていない。従って、中央と地方で意見の対立するケースが存在する。第2に、旧システム下での国有企業は、学校・病院等の福利施設や、年金・保険等の社会保障制度を擁する小さなコミュニティーを形成していたため、それらの代替方法を確立する以前に破産させられないことである。特に公的な社会保障制度の整備が遅れている現状での破産は、労働者や退職者の死活問題となるため、政府は企業側が望んだとしても、そう簡単には許可することができない。そして第3は、第2点とも関連することだが、公的な失業保険の整備が遅れている状態で、大量の失業者が発生すると、社会の治安を悪化させ、政治的な安定を損なうことである。このため中国では、失業対策として、近年再就職プログラムを各都市で実施しているが、国有企業は破産していないものでも職員の3分の1は余剰労働力といわれており、これらの企業からも大量の失業者が排出されるため、供給に対して需要が全く追い付かないのが現状である。

 

2、 全国的動向

 

1997年1月28日、経済参考報は「数字に法則を求める」と題して、1989年から96年までの総企業破産件数と、95年〜96年の省別の動向について報

 

 

 

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