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別添参考資料1

 

東北3省の国有企業改革の現状

国際研究奨学財団

吉田 均(研究員)

 

1997年9月の中国共産党第15回全国代表大会以降、国有企業改革は内外ともに非常にホットな問題となりつつある。この大会では、国有企業の株式会社化と合弁・倒産・売却を促進させるなど、これまで以上に思いきった方法を全面的に導入することが宣言され、国有企業改革はいよいよ本格的かつ全面的な実施段階になったとの観がある。しかし、これは筆者の勉強不足かもしれないが、国有企業改革は、色々な対象に対して、多種多様なアプローチがなされており、全体像をつかむことは非常に難しい。さらに、地方レベルの実施状況や地域間の比較は、省政府があまり現状を発表せず、かつ発表の時期や内容が異なるため対照が困難であり、中国国内でもこの種の研究は非常に少ない。このような状況が国有企業の全体的把握を妨げていると思われる。

そこで、ここでは実験的に、国有企業改革と呼ばれる一連の改革を、主要な政策項目別に分け、省レベルでの進展状況を比較することを試みた。その手がかりになる資料として、近年になって各省の社会科学院が公表し始めた省レベルの経済社会に関する年度報告書と、筆者の現地でのヒヤリング内容を中心に、個々に資料内容に差はあっても、遼寧省・吉林省・黒龍江省の3省ごとに分類し、ポイントをまとめることで、初歩的な比較対象が可能となるよう心がけた。

一般的に、国有企業改革の基幹となる政策は、企業自身の改革である(1)現代企業制度改革であり、その一部として(2)株式会社制度の導入や、(3)企業集団の形成、(4)中小企業改革が実施されている、また、これを実現する上で社会環境を整備するための補完的政策として、(5)資本構成適正化モデル都市(優化資本結構試点城市)に限定した実験や、(6)国有資産管理制度の改革、(7)再就職プロジェクト、(8)社会保険および最低生活保障制度の改革が実施されている。従ってここでは、まず項目順に全国レベルでの改革内容を確認し、次いで省別の改革の進展状況を記述していく。なおデータは、できる限り1997年のものを探すよう心がけたが、ない場合は過去の状況を記述するに留めた。

 

(1) 現代企業制度改革

 

現代企業制度とは、資本主義における近代的会社企業制度のことであり、その目標は、a)国家の国有資産所有権と企業の法人財産権の区別、b)企業の有限責任制と自主経営および損益自己負担、c)出資者の所有者権益と有限責任、d)企業の市場競争と政府の企業経営への不介入、e)科学的な企業指導制度と組織

 

 

 

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