3 債務超過であってもなくても関係ない
長銀を破綻させると「計り知れないリスク」が発生すると政府が本気で信じているのであれば、専門家を動員してでも、そのリスクの存在を国民に明確に説明し、仮に長銀が債務超過であっても救済するべきと主張するべきである。
「長銀が債務超過であるかどうか」についての国会での与野党の議論は、全く噛み合っていない。長銀は「時価評価」すれば、ほぼ間違いなく債務超過である。大野木長銀頭取は「原価法なので含み損は会計処理上関係ない」と言っているが、これは「国際標準に則った時価法で計算すれば債務超過である」と言っているに等しい。
政府が長銀を救済する必要が真にあると考えているのであれば、むしろ「長銀は債務超過である」という認識を出発点にした方がはるかにわかりやすい。すなわち、もし論点1の議論にも関わらず、長銀を救済しないと「本当に計り知れない社会的コストがかかるのであれば、政府および長銀の経営陣は、そのリスクはどういうリスクで、そのコストはどれほどなのかを、専門家を動員してでも、国民に説明し、国民の理解を求める努力をする必要がある。
同時に、救済のための金額は、すでに見た通り5200億円では足りず、住友信託に負担を残さないためには最低でも1兆円(注)以上必要であることも、国民に明示すべきである。
(注) 一兆円の資本投入でも長銀の資本勘定は時価べースでゼロになるに過きず、合併後の新銀行の自己資本比率は資産が増える分だけ減少する。もし新銀行を生き延びさせるのであれば、おそらく2兆円近くの資本投入が必要。
論点3 政府は何を守ろうとしているのか
不良債権問題の処理は、問題銀行を退出させれば済む話ではない。問題銀行の整理と同時に、問題企業の整理を同時に進めなければ不良債権問題は解決しない。