(ロ) デリバティブの取引先企業に関する問題
先にI-1-(ロ)で、デリバティブ取引の解消が「大手」金融機関に及ぼす影響は対処可能であると述べた。しかし、長銀はビジネスの一貫として、その取引先である一般企業に対してもデリバティブ取引を行なっている。長銀の破綻に伴い、こうした一般企業にリスクが及ぶ可能性は否定できない。しかし、これも「取引先の選別」を行なった上で個別に対処可能な問題である。
まず、銀行とデリバティブ取引を活発に行なっている会社の中には、いわゆる「財テク会社」(ヤクルト、かつての日産生命等)が多く、その取引は「粉飾目的」であることが多い。こうした会社については「自己責任原則」に則り、保護する必要はない。その他の健全な取引先が純粋なヘッジ目的でデリバティブ取引を行なっている場合で、取引の解消に伴い大きな損失(と言っても大した金額ではない)を被る可能性がある場合には、政府が他の健全銀行へ取引斡旋をすれば済む話である。
論点2 長銀が債務超過であるかどうかの問題
長銀が「時価法に基いた適性な会計処理」を行なえば、確実に債務超過である。
1 株式含み損の問題
長銀が債務超過であるかどうかについての、日野金融監督庁長官、大野木長銀頭取の主張はつぎの通りである。

しかし、長銀は98年3月期に、有価証券の会計を低価法から原価法に変更している。
原価法:資産を購入した時点の簿価で常に表示する
低価法:簿価と時価の安い方で表示する
時価法:常に時価で表示する
現在の世界的な流れは時価法であり、国際会計基準でも有価証券については時価法を求めている。