従って、トゥー・ピッグ・トゥー・フェイルは、今でも「例外的な選択肢」として残っているが、それは「金融システムヘの危機の連鎖を防ぐこと」を目的としている。では、どうやって「金融システムヘの危機の連鎖を防ぐ」のかと言えば、それは「保険対象以外の預金を保護すること」(すでに他の債務を保護することは念頭にない)によってである。
言いかえれば、保険対象以外の預金を保護しなければ、金融システム全体へ危機が波及してしまうので、そうならないように保険対象以外の預金を保護することを、「トゥービッグドゥーフェイル」と呼ぶのである。
ところが日本では、すでに保険対象以外の預金を全面的に保護すると政府が公約している。したがって、日本では、すでにトゥー・ビッグ・トゥー・フェイル政策が実質的にはとられているのである。
預金を全額保護している以上、原理的にいって、「金融システム全体へ危機が波及すること」はあり得ないのであり、この原理をもって問題銀行を救済する正当性はない。
III 銀行の取引先(借り手)への影響
長銀救済により救済されるのは「善意かつ健全」とは言えない借り手である。
(イ) 関連会社に関する問題
今回の長銀救済策に隠された最大の問題が、この取引先(借り手)への影響の問題である。
結論的に述べれば、長銀救済の最大の目的は、(長銀そのものの救済ではないとしても)長銀からの借り手である関連会社、およびそれら関連会社の債権者(農林系金融機関)と債務者(ゼネコン、不動産等)の救済である。
長銀は、その関連会社である日本リース(リース業)、日本ランディック(不動産賃貸業)、エヌイーディー(ベンチャーキャピタル)に対して、5200億円の債権を放棄する。長銀がこれらの債権を放棄(=不良債権として償却)すること自体はよしとしても、問題はこれらの関連会社がそのまま生かされ続けることにある。
もし長銀が破綻前処理ではなく、破綻後処理であるとすれば、これらの借り手は自民党の「ブリッジバンク法案」においても、民主党の「金融再生計画」においても、「善意かつ健全な借り手」かどうか厳正に選別されるべき借り手である。そして「善意かつ健全な借り手」でないとすれば、整理回収銀行に移され「徹底的な回収」が図られる先である。
破綻前処理であっても、この借り手の「素性」については、「善意かつ健全」という(与野党間で争点とはなっていない)基準に基づいて厳正に審査するべきである。そして、淘汰すべき借り手であると判断されるのであれば、必要な法的措置を講じ、こうした借り手に対する債権を破綻前処理においても整理回収銀行に移管できるようにするべきである。