第10回GFRS政策セミナーレジメ(その2)
論点1 長銀救済の大義名分である「システミックリスク」について
政府の論点:
1] 「内外の金融システムに重大な影響がある」
2] 「日本の金融機関全体に対する信用不安が高まる」
3] 「デリバティブ取引の解消により、内外の金融機関が混乱に陥る」
4] 「社会コストは図り知れない大きさとなる」
これらの政府の主張は、いわゆる「システミックリスク」について言及したものである。そもそもこの「システミックリスク」という言葉自体が一般国民には理解できないものである。
そこで、「システミックリスク」を分解すると、次の三つに分けられる。
I 決済システムヘの影響
(イ) 銀行間資金(現金)決済への影響
(ロ) デリバティブ取引解消に伴う他の金融機関への影響
II 預金者の混乱(取り付け)
III 銀行の取引先(借り手)への影響
I 決済システムヘの影響
長銀の破綻により、決済システム全体にリスクが波及する可能性は小さい。
(イ) 銀行間資金(現金)決済への影響
日銀の資金決済がRTGS(=即時全額決済)に移行していないことを考えると、政府の主張にも正当性がないとは言いきれない。しかし長銀が破綻することによって、決済システムが受ける影響は、現実には日銀により対処可能(マネジャブル)な範囲に収まると考えられる。それは、昨年11月の北海道拓殖銀行の破綻や山一証券の破綻に際し、日銀が機動的に流動性を供給することによって、見事に「危機の連鎖」を回避したことがなによりの証左である。
(ロ) デリバティブ取引解消に伴う他の金融機関への影響
デリバティブ取引解消に伴うリスクは、少なくとも内外の「大手」金融機関においては、個別に対処可能であり、「計り知れない」リスクなどというものではない。