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誤解を承知であえて言うと、政府自民党が守ろうとしていたところは、恐らく日本リースとかランディックの背景にあるところ、不動産業界とかゼネコン業界とか、さらにはそこにお金を貸し込んで、一金融機関当たりの金額は少ないけれども、個別信連にとっては生死を左右されかねない農協系金融機関、そういったところを救いたかったのではないかと思います。それと、そこまでうがった見方をしないとしても、とにかく混乱を避けたかったというのはすごくあると思うのです。混乱を避けたい、あるいは借り手をそのままにしておくということは、日本全体としてこの関係をずっと続けるということなのです。例えば民主党の菅さんなどがテレビで自民党案はノーランディングと言っているのは、この部分なのです。ちなみに、菅さんは本当によくわかっている人で、それから自由党の小沢さんとか野田さんとか、若手の西田さんとか、彼らもやはりここをすごく問題視していて、ここを何とかしなければいけないというところに彼らの問題意識があることは事実だと思います。そういった意味で、長銀の今回の処理というのは、個人的にはあれしかないと思うのです。

ただ、問題はこれからで、これからが始まりなのです。あえて言うと、パンドラの箱をあけてしまって、借り手の混乱をある程度痛みとしてこれから見せていくわけです。それで、例えば公的資金を長銀について使うべきでないというのは、これは私自身そう信じて発言してきましたけれども、それによって少なくとも長銀の関連会社でこれからつぶれるところが出てくるし、それから失業者も出てくるわけです。そのプロセスを経ないことには不良債権問題は解決しないと思うのですけれども、これが実際これから見えてくる。メディアがまず報道します。北海道拓殖の場合でもあれだけ報道したわけですから、長銀の関連でこういった個別具体的なミクロの問題が起きているというのは探せばいくらでも出てきますから、そこで腰が引ける可能性というのはすごくあると思うのです。民主党ですら、自由党ですら、実際そういったものが出てきたときに、やはり長銀を破綻させるべきではなかったと、北拓についてもそういった議論があるぐらいですから、そういう議論が出てくる。これはすごく可能性として高いと思うのです。ここを乗り切れる政治のリーダーシップがあるかどうかというのが、個人的にすごく心配しているところです。

 

 

 

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