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の100億円を元にして100億円の貸出金がある。この銀行の自己資本率は10%、これが健全な銀行の姿です。その右側が、債務超過の銀行の姿です。これは、貸出金が当初は100億円だったけれども、その貸出金が不良債権化してしまって、現在の市場価値が50億円しかない。ところが、返さなければいけない預金は90億円あるわけです。そうすると、この銀行は預金を返すためには何をしなければいけないかというと、貸出金を流動化しても40億円足りない。資本金を10億円つぎ込んでもさらに30億円足りなくて、預金を全額保護するのであれば、その30億円をだれかが払わなければいけない。だれが払うのかというと、国民負担になるわけです。税金であるとかないとかといっても、最終的には国民負担であることは間違いないわけです。

ここまでは我々は見えるのですけれども、同じ債務超過の銀行のバランスシートを左斜め下におろして、その右側に取引先のバランスシートを書いておきましたが、ここが不良債権の原因です。この取引先は、銀行から100億円の借入をしたわけです。その100億円を使って投資をしたり、あるいは在庫を増やしたりして、当初はそれが100億円の価値を持っていたのですけれども、これが例えばマンションの価値が下落したりして、現在の資産の価値は50億円しかない。これが取引先の姿です。この存在があるから、左側の債務超過の銀行というのは、鏡として、あるいは原因に対する結果として映っていて存在しているわけです。従って、もし借り手を保護してしまうと、つまり長銀を破綻させてしまったとしても、長銀の借り手である問題取引先、例えば日本リースとかランディックとかNEDというのをそのまま保護してしまって、それに対して公的な融資を続けたりしてしまうと、問題は何も解決しないわけです。現象面だけを消してしまって、問題の本質というのは何も除去されないわけです。これを続けると何が起きるか。

不良債権はほうっておけば劣化しますから、日銀の統計でも、第2分類については3年間で16.7%劣化したという統計もありますし、そういった意味でこの状態を続けることというのは、国民負担を膨らませるということなのです。本当に景気回復して、地価が上がって、不動産が上がって、投資が回収できて、右肩上がりの経済に戻るという確信があるのだったら、時間とともに解決する問題ではあり得るのですが、結局、時間とともに解決するとずっと92年あたりから思い込んでいて、抜本的な解決の取り組まなかったというのが今の姿です。ここをどこかで断ち切らなければいけないですね。それで、今回、野中官房長官が債権放棄をさせないと言ったのは、これはある意味で画期的なことです。

 

 

 

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