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だったと思いますけれども、有価証券の会計については時価を適用するというのをやったわけです。それはバランスシートで時価表示というところまでは踏み込んでいなくて、その時点では時価を開示するという話だったのですけれども、それでFASBの107号の冒頭のコメントを読むと、まさにS&Lのことが書いてあるのです。S&Lに原価法を適用したことによってゲイン・トレーディングが横行して、結果的にS&Lの財務状況は悪化した。その反省に立ってという趣旨のことが書いてあります。つまり、アメリカでは既に歴史の教訓として、原価法を適用すると含み損を隠すだけだということが明確に反省されたにもかかわらず、政府自民党は原価法の適用を認めて、お化粧したわけです。

それから、不動産の再評価についてですが、不動産には投資用の不動産と事業用の不動産があって、本来、時価評価するべき不動産は投資用の不動産ですけれども、どういうわけか事業用の不動産、要するに投資目的でない売却を想定していない不動産について時価評価を認めるといった措置をとりました。なぜかというと、その方が簿価が低いので、実現益が非常に高くなる。そういったとんでもない措置をとって、その上13兆円の一律資本注入の枠を用意したのです。これがその後の問題の発端で、結局ディスクロージャーと全く逆のことをやって、本来の姿をお化粧してしまって、実は銀行によってかなり信用度の格差があるにもかかわらず、そこで13兆円という枠をつくって、金融危機管理審査委員会で一律に資本注入をしていく。これは本当に問題の先送りにすぎなかったわけです。

ちょっと時間もないので話を急ぎますけれども、8ぺージのところですが、これはイメージ的にわかりやすく書いた図ですけれども、このところずっと私が機会があるごとにしゃべっているのが、私は個人的に、不良債権問題あるいは銀行というのは結果の部分であって、原因は銀行ではないと思うのです。もちろん貸し手の責任というのはあるのですが、不良債権とは何かというと、お金を借りたけれども返さない企業が不良債権の製造元で、その結果として銀行のバランスシートが不良化して、不良債権として我々に見えている。我々に見えているのは銀行の部分だけだと思うのです。しかし、本当は因果関係として、その裏に債務超過の取引先であるとか、借りた金を返さない取引先がある。左上が、正常な銀行の姿です。この図は単純化していますけれども、正常な銀行というのは、例えば預金が90億円あって、それに対して自己資本が10億円あって、そ

 

 

 

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