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来て、次年度以降が利息はほとんどゼロで、なおかつ元金も減るといったものもあります。このように当期の利益を捻出するための仕組みというのは、つまりほとんど粉飾ですが、それはデリバティブを使えば非常に簡単にできるのです。そういった取引先を恐らく長銀自身も抱えているのではないかと思うのです。長銀自身がそういったデリバティブのプロバイダーとして、顧客との間でそういった取引をやっている可能性は、完全には否定できないと思います。これが何を意味するかというと、そういったところは長銀の破綻によって、間違いなく非常に多大な損失をこうむる可能性があります。そうした会社を救うかどうかというのはこれまた別の議論で、そこまで救わなければいけないから公的資金という話には決してならないわけです。ヤクルトを救うために公的資金とか、日商岩井の得損を公的資金でカバーするという理論が成り立たないのと同じで、そういった非常に怪しいデリバティブをやっているところは、これからまたいくつか出てくると思いますけれども、そこまで保護する必要は当然ないわけです。私は実はそういった取引がすごく嫌で、最後までそれに手を染めることができませんでした。あの業界で一流になるにはそれをかなりやらなければいけないわけです。わたしの場合、それを個人的にできなくて、最終的にあの業界を去った人間であります。(笑)

それで、論点2のところから、これからどうするべきかという話につめていきたいと思います。ちょっとレジュメから離れるかもしれませんが、今年の3月に政府がいくつかの方策を打ち出しました。一つは、有価証券の会計について、定価法から原価法に切り換えるというものでした。それから、不動産について、ここには書いていませんけれども、不動産については再評価を認めました。まず原価法、定価法、これはもう皆さんご承知のとおりなのですが、アメリカが同じ失敗をしています。80年代にS&L(貯蓄貸付組合)が非常に危機的な状況に陥ったときに、その前夜に有価証券について原価法を認めるという措置をアメリカも行っております。それと同じことを日本がこの春やったわけです。アメリカはその後何が起きたかというと、ゲイン・トレーディングと言われる取引が横行しました。つまり簿価が低くて時価が高い債券だけを市場で売って、そこで実現益を出す一方で、時価が下がってしまった証券については、原価法ですから簿価のまま計上できますから、含み損を抱えたままずっと塩漬けにして、それで財務体質を一層悪くしていった、そういった経験があるのです。それで、さっきお話しした預金保険公社改革法ができた1991年に、アメリカの財務会計基準で、FASBの107号

 

 

 

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