です。そうすると、信用不安をささやかれている都銀ともやめてしまおうという話があり得るのです。それがすごく怖いというのは、彼らも言っていました。私も現場にいた人間として、それに対しては同じような感触を持っています。ただこれをどう理解するべきかというと、これは金融機関の財務状況のディスクロージャーの問題と裏腹の関係なのです。ディスクロージャーが徹底していないから、いわゆる日本で金融不安をささやかれている銀行とはやはりやめようという話になるわけで、もしディスクロージャーが徹底していて、信用リスクを客観的に判断する材料がそこにあれば、こういった二次的な波及は起きないわけです。この点は後ほど、これからどうあるべきかという政策に絡めて、少しお話ししたいと思います。
次に、預金者の混乱、これは大した話ではないと思うのです。というのは、コンチネンタル・イリノイ銀行のときの議論をいろいろ調べてみると、何が一番言われていたかというと、保険対象以外の預金を保護するべきかどうかという話だったのです。冷静に考えると、アメリカは基本的にペイオフというのが踏襲されていて、コンチネンタルの場合は、例外的にペイオフではない全額救済という話だったのです。コンチネンタルのときは、もちろん決済システムの話も当然あったのですが、金融システムに混乱を起こさせないようにするには、まず預金者に混乱を起こさせてはいけないので、従って預金を全額保護しようというロジックだったと思うのです。この視点で日本の状況を考えてみると、預金は既に2001年3月まで全額保護されているわけですから、この原理をもって預金を保護しないと、金融システムリスクが顕現化するという言い方はできないわけです。逆に言うと、日本では既にトゥー・ビッグ・トゥー・フェールがマーケットに織り込まれているわけですから、預金者の混乱を防ぐというのは大義名分にはなり得ないのではないか、そんな気がしています。
ちなみに、自民党の保岡さんなどが、これほど大きな銀行をつぶした例は海外でもないとおっしゃっていましたけれども、それは事実そのとおりなのですが、ただトゥー・ビッグ・トゥー・フェールは確立された原則ではありません。この考え方は1991年の今のアメリカの金融制度の根幹となっている法律、預金保険公社改革法(フィデューシア)が成立しましたけれども、ここで原則否定されています。トゥー・ビッグ・トゥー・フェールがなぜ否定されたかというと、結局これがあることによって問題銀行の経営者が経営改善を努力をしない、最終的には公的資金で保護されるという、そこに安心感が