りませんが、そういったときに少なくとも日銀は結果的に流動性の供給を非常にうまくやって、そういった決済システムの影響をほとんど発生させなかったというのが一応実績としてあります。従って、これをもって長銀を破綻させることができないというのは、少なくとも大義名分とはなり得ないといった気がしております。
それからデリバティブですが、これは実はすごく迷って、皆さんご記憶のとおり、この問題の経緯は、あえて固有名詞を申し上げますと、たしか日経新聞だったか、日経金融かどっちかで、編集委員の滝田洋一さんがこの話を最初に取り上げたのだと思います。長銀のデリバティブが残高50兆円という非常に大きい金額なので、これを解消するときに非常に大きく混乱が起きるというのを滝田さんが最初に取り上げました。そのときに言われていたのが、ISDAという名称のスワップ取引などをやるときの約款をつくっているインターナショナル・スワップ・リーダーズ・アソシエーションという協会があるのですけれども、その約款に従って解約が起こると非常に大変だということです。それは非常にもっともな指摘なのですが、その後、同じ日経金融新聞の最終面のスクランブルというところで同じ編集委員の前田昌孝さんが、いやそうじゃない、これは大変大きなリスクとは言えないという反論を述べて、日経社内でもずいぶん議論が分かれていたのではないでしょうか。国会では自民党の保岡さんがこの話を取り上げて、それから宮沢さんも取り上げたのはご記憶のとおりだと思います。
ここについての話は、2ぺージ目にちょっと書いておきましたが、これも「長銀については」という断りをつけなければいけないのですけれども、少なくとも長銀、それからその他既に不安をささやかれている銀行については、この部分のリスクはいわゆるコントローラブルの範囲に収まるのではないかと思います。これは私自身もすごく悩んだところで、一昨年までずっと外資系の会社に延べ12年おりまして、デリバティブを私自身やっておりましたので、この点については東京にいる日本人、アメリカ人のデリバティブの責任者などとずいぶん意見交換をしたのですけれども、結果的には私の考えとほぼ同じ考えだったので、それをご披露したいのです。さっき申し上げた滝田さんのコメント・コラムの中にあったデリバティブの約款ですけれども、ISDAというところがちょうど銀行の銀行取引約定書に近いような標準約款をつくっていまして、これが大体マスターアグリーメントで、特にスワップ取引をやるような場合には、金融機関同士が取り交わしております。