その2のレジュメのシステミックリスク、これは長銀についてはシステミックリスクは当てはまらないということをこのメモに書いて、それでこの話が出ているときに民主党の委員の人とか新党平和の人とかにお送りして理論武装をお手伝いした経緯があります。当時の政府の論点といいますのは、極めて抽象的な表現が多くて、長銀を破綻させてしまうと内外の金融システムに重大な影響があるとか、日本の金融機関全体に対する信用不安が高まるとか、それから特に声高に叫ばれたのが、デリバティブ取引の解消によって内外の金融市場、金融機関に非常に大きな混乱が生じる、それからそれらをひっくるめて社会的なコストは計り知れない大きさとなる、そういった言葉をずいぶん並べ立てていた時期があったと思います。
このシステミックリスクの問題というのは、これからも常につきまとう問題ですから、ここで一応整理しておきたいと思うのですが、システミックリスクを少し分解してみると、大体次の3つに分けられると思います。1つが決済システムへの影響です。これは、かつては銀行間の資金のやりとりでは現金の部分だけを考えていればよかったのですけれども、今日ではデリバティブの取引が非常に大きなウエイトを占めておりますので、これも一応決済システムの範疇で考える必要があるのではないかと思います。それから第2点は、いわゆる預金者の混乱、取りつけの話です。後ほどお話ししますけれども、アメリカでコンチネンタル・イリノイ銀行のときに特に視点として重視されたのは、この預金者の問題が非常に大きかったのではないかと思います。それから3つ目が、これがある意味で日本の非常に独特な部分だと思うのですけれども、銀行の取引先、特に借り手への影響をどうするのかというのが、非常に大きなウエイトで語られております。
これを一つ一つ検証していきたいのですが、まず決済システムへの影響。これは、ないとはもちろん言い切れませんが、長銀のクラスであると非常に少ないということは言っていいのではないかと思います。問題は、日銀の資金決済がまだ即時全額決済(RTGS)に完全に移行しておりませんから、今の日銀のお金の決済というのは、たしか日中営業時間を3回に分けて、そこで決済するという形ですから、その間の部分の時差がきちんとカバーできないという技術的な問題があろうと思います。従って、即時全額決済に移行すればこのリスクはかなりミニマイズされると思うのですけれども、長銀に限って言うと、かつての経験則から言えば、北海道拓殖銀行のとき、それから山一は銀行ではあ