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アジアはひとつずつ

今のアジア通貨危機の要因について、アジアの国は全部そうだという感じで言いましたが、実はそうではなくて、アジアはひとつではない。今、はやっている言葉は「アジアはひとつではなくて、アジアはひとつずつだ」という言葉です。国によって違うわけです。たとえば、韓国と香港はまったく違います。香港上海銀行のエコノミストに、韓国では国民が金の供出運動というのをやっているという話をしましたら、彼は「いやあ、韓国人というのは何を考えているのか、まったくわからん。そういうのは、愛国的なのではなくて、クレージーなだけだ」と言っていました。

台湾と韓国とは、アジアのことについて特に知識のない一般のエコノミストは、同じような国だと思っておられると思いますけれども、台湾と韓国もまったく違うのです。韓国の場合には、何か危機が起きると、必ず政府が財閥を救ってきました。台湾は、そういうことはしていません。なぜそうかというと、そもそも、台湾の戦後の企業と、韓国の戦後の企業の成立が違うんです。台湾の場合には、まず日本が支配していて、中国本土から国民党軍が逃げてきて台湾を支配しました。そのときに日本時代に政治的に上に立っていた人たちはみんな追い払われてしまった。追い払われた人たちがビジネスを起こして、成功した人たちが今の台湾のビジネスの中心にいるわけです。ところが、韓国の場合には、朴正煕大統領が政権をとって、1960年代中ごろに経済発展政策を行い、銀行主導で財閥を作り始めた。韓国の中央銀行法を改正して、まったく政府の支配下にある中央銀行を作りました。中央銀行がお札を刷って、それを産業銀行に渡して、産業銀行が韓国の財閥にお金を貸していたのです。台湾で企業が危機になっても政府は何もしてくれませんが、韓国では企業を救ってきたわけです。

まず、1970年前後の石油危機の辺りで救った。そして、80年前後の第2次石油危機でも救った。それから90年前後の調子が悪くなったときも救った。何度も救っているわけです。ですから、何かあっても、絶対救ってくれるだろうと思っていたわけです。ところが、金泳三大統領の時代に財閥のスキャンダルがあって救えなくなった。これは大変だという話になって、レジームが変わってしまったというのが韓国なのです。また、スキャンダルで救えなくなっただけではなくて、もっと大きな問題があった。それは、韓国の企業が外国からいっぱい借りていたということです。それ以前は、多少は外国から借りていましたけれども、基本的には韓国の中で借りていたわけです。韓国の中で借りていたわけですから、中央銀行がお札を刷って、それを韓国の財閥に渡せば、それで危機は収まったわけです。ところが、外国から借りていますと、そういうことをすると

 

 

 

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