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スポーツ写真の芸術性

西木正明

 

スポーツ写真は、写真界の中ではやや異色の存在だと言えるだろう。基本的にスポーツ写真は、いわゆる報道写真のジャンルに属する。では報道写真の範囲内ですべてが語れるかというと、そうでもないところに、スポーツ写真のおもしろさと特異性がある。

一般的な意味での報道写真に求められるのは、事件なり出来事なりを、正確かつ過不足なく見る者に伝えることである。ところが、スポーツ写真においては、それだけではよしとされない。ある意味で報道写真とは対極に位置づけられている、芸術性をも含んでいることを要求されるのだ。

言い換えると、どれほど迫力に満ちた写真であっても、満点の評価は与えられない。見る者をして、ああ、これは美しい、と言わしめるだけの、芸術性が不可欠なのだ。

このことは、スポーツ写真が常に人間そのものを対象としていることと無縁ではない。鍛え上げられた肉体の躍動を、もっとも美しい形で、あるいは最高のシチュエーションを背景に写し取る。それが、見る者を感動させる美につながる。

今回の作品群を見た場合、そういった美意識に裏付けられた作品が、期待したほどには多くないことに気づく。その中で、惜しくもゴールドプライズこそ逸したものの、ファイネスト・スポーツ・フォトグラファーに輝いた、グラハム・チャドウィック氏(英国)の『チェイスィング・シャドウズ』は、その感性の見事さと良質な抒情、これ以上はないと思われるシャッターチャンスを逃さなかったことで、ひときわ異彩を放っていた。

私自身は、これが大賞に選ばれると思ったが、惜しくも次点の上記の賞になった。もちろん大賞に輝いたオーストラリアのフィル・ヒルヤード氏の『プレシジョン・ティーム』も見事な出来ばえで、受賞に対して異を唱えるつもりはない。この楽しいコンテストの、一層の発展を期待する。

 

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SSF世界スポーツフォトコンテスト'98 ファイネスト・スポーツ・フォトグラファー GRAHAM CHADWICK(UK)“Chasing Shadows”

 

にしきまさあき

小説家、ノンフィクション作家。1940年秋田県生まれ。早稲田大学教育学部社会科学中退。「オホーツク諜報船」で日本ノンフィクション賞新入賞受賞。「凍れる瞳」「端島の女」で第99回直木賞を受賞。

 

PICK UP HEALTH 1]

 

不用意な摂りすぎは禁物

上手に使いたいサプリメント

 

スポーツの秋を迎え、日頃運動をしていない人もスポーツに駆り出される機会が多くなってくるのではないでしょうか。慣れない運動をした後の疲労回復や、日焼けのアフターケアに、ビタミン類の補給を心掛けたいところです。

近頃では、ビタミンやミネラルをお菓子の形で手軽に摂れる「サプリメント=栄養補助食品」がたくさん出回っています。最もポピュラーなのはビタミンC系のサプリメント。「レモン○個分のビタミンC」などとうたったアレです。

ビタミンCは「抗酸化物質」の一つで、疲労回復や老化防止の効果があります。というのも、私たちの身体を構成する細胞の一つ一つは、呼吸をする過程で、細胞にダメージを与える活性酸素を発生させます。この活性酸素の働きを抑制するのが抗酸化物質です。最近では、赤ワインやチョコレートに含まれるポリフェノールが強い抗酸化作用を持つ物質として注目されています。

こうした機能を持つビタミンCですが、一日の必要量は成人でおよそ60ミリグラム。でも、サプリメントを常用しているスポーツ選手や愛好者の中には、この10倍近い量を摂取している人が少なくありません。摂りすぎは身体に悪くないのでしょうか?

ビタミンCなどの水溶性ビタミンは、必要以上に摂取しても不要分は尿から排出されるので特に問題はない、とこれまで言われてきました。ところが、過剰に摂取されたビタミンCは、抗酸化物質としてではなく、逆に細胞の老化を促進する酸化物質として働き、細胞のDNAに損傷を与えている可能性がある、との研究結果が最近になって報告されています(科学雑誌「ネイチャー」392号、1998.4/9)。いずれにせよ、行きすぎた摂取は腎臓や肝臓に負担をかける可能性があります。ビタミンCにかぎらず、サプリメントのみに頼った微量栄養素の安易な摂りすぎは控えるべきなのかも知れません。

やはり栄養分は、バランスの取れた3度の食事でしっかり摂り、足りないものをサプリメントで補う、というのが正常な姿だということでしょう。

 

SPORTS ON THE WEB!

 

今やすっかり市民権を得た感のあるインターネット 3年前は、約7割が職場や学校からの利用だったのが現在は形勢逆転、約64%が自宅からの利用者なのだそうです(※)お金を払って自宅で利用するに足るメディアとして評価されているということでしょうか

でも、いざアクセスしてみても膨大な情報量に圧倒され、なかなか目的の情報にたどりつけないものです。そこで、SSFが見つけたちょっと気になるサイトを紹介し、皆さんの貴重な時間と電話代の節約に貢献しようというのがこのコーナー 独断・偏向をご承知おきのうえ、一度アクセスしてみてください

手前味噌ですが、SSFのサイトもよろしく

http://www.ssf.or.jp/

 

※サイバースペースジャパンの調査(http://www.csj.co.jp/)

 

●ちょっとブレイク

◇「くびれ命!」

http://www.geocities.co.jp/colosseum/6475/

 

福井市在住の30代女性がダンベル体操とウォーキングで挑む、美しい「くびれ」づくりのドキュメント。今年1月に66cmのウエストから始まったこのプロジェクトは、着実に成果を見せています。入浴中のマッサージベルトには「?」ですが……がんばってほしいものです。

 

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●英語がダメでも一度は見るべし

◇SportQUEST

http://www.sportquest.com/

 

カナダの国際スポーツ情報センターが運営するスポーツ専門サーチエンジン。主要な競技団体や調査データを公開しているサイトへ案内してくれます。スポーツサイト探索の王道か。

 

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●メジャースポーツが知りたい……

◇Sports WAVE

http://www.sports-i.co.jp/

 

スポーツ専門チャンネル「Sports-i.ESPN」のサイト。海外メジャースポーツのニュースが日本語で読めるのは嬉しいものです。

 

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●最近健康のことが気になる……

◇ヘルス・スクランブル

http://www.health.co.jp/

 

健康にまつわる情報ならココ!と言い切れるサイトのひとつ。実に幅広い情報を網羅していて、ひととおり目を通すだけでも大変。特に健康関連サイトの「超高速」サーチエンジンは秀逸。

 

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●地方自治体の動きを知りたい。

◇NIPPON-Net

http://www.nippon-net.ne.jp/

 

「地方公共団体への水先案内役」を名乗るに十分な内容。行政機関の公式サイトを探すならココは外せません。

 

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驢馬の目

 

7月の未、秋田の空港は、高校総体が開かれる香川県へ向かう高校生で溢れていた。派手な色彩のジャージの上下を着た女子のチーム、スタジアムジャンパーにオーバーパンツの黒い団体、二百人を越える人が、思い思いのユニフォームをまとい、歓楽街のネオンのように色が氾濫し、興奮した嬌声、ふざけ合う怒声が充満していた。見ているだけで気が滅入る光景であった。

聞けば、このまま羽田を経て高松まで行くという。一般の乗客と一緒なのは言うまでもない。中には引率の先生までジャージの上下というチームもある。まるで町内の学校へ練習に行くようではないか。旅するということは他人に見られるということではないか。人に不快感を与えない服装のTPOはどうしたのか、先生方もスポーツ選手というだけですべての無作法が許されると思っているのだろうか。

カルチャーレスは秋田だけではない、高松には日本全国からジャージの集団が押し寄せたのであろう。色とりどりのジャージのギャングがこの夏も、日本全国を駆け回ったに違いない。スポーツはルールを守ることが基本である。ならば服装の常識も実行しよう。ジャージやオーバーパンツは競技の場だけにふさわしいことを知ろう。お願いだ、スポーツは文化だと主張する気も萎えるから。

 

 

 

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