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依田成史のスポーツクラブ・マネジメント3]

ジェネラルマネージャーが果たさなければならないこと

 

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横浜カントリーアンドアスレチッククラブ(YC&AC)ゼネラルマネージャーとして22年間勤務。

 

YC&AC概要

所在地 横浜市中区矢向台11-1

設立 1868年(明治2年)

敷地面積 33,000m2

会員数 36カ国、約600家族

 

さて、お約束したように今回は「職務規定」についてお話ししましょう。前回で「企業秘密」などと大それたことを書きましたが、実は秘密でもなんでもありません。賃金や休暇を定める雇用条件や福利厚生面での配慮を定める「規定」は、一般の企業のものと大差ありません。ただ、私どもでは、各セクションの責任者、責任者の下で働くスタッフたちとそれぞれのポジションごとに特定の「職務規定」を定めている点が、違っています。たとえていえば、この私にも総支配人として遵守すべき「職務規定」があるのです。

YC&ACの職務規定は3つに分かれます。

まず第一は待遇面に関するものです。仕事はあくまでも生活を楽しむ為に必要な労働ですから、勤務条件がしっかりしていなくてはなりません。週末・祭日に働くのか、休みがとれるのか、給料・時間外・休日出勤手当て・ボーナス等に関する条件・交通費支給の条件です。次には会社一般の従業員規則、これは原則として社員とアルバイトに分けて作成してあります。そして、契約期間や査定・再契約などの条件、さらにそのポジションで果たさなければならない義務(職務)を細かに定めた「規定」です。ポジションによっては、この規定違反が解雇の理由になることもあります。

 

ジェネラルマネージャー

「21の義務」

私の職務規定の前文には、「ジェネラルマネージャーはクラブの全運営に責任を持つ」とうたわれています。そして、果たすべき義務は21項目にわたって規定されています。これをご覧いただければ、クラブ・マネージメントとは何か、がご理解いただけるのではないでしょうか。

1) 理事会で決められた政策を実行すること。経営スタッフを指導・監督し実行すること。

2) 定められた政策に沿って運営計画を立案し、承認・実行し、その結果を検討すること。運営をより効率よくするべき改善案を立案し、提案すること。

3) クラブの年間及び長期ビジョンを考え、立案すること。

4) 年間運営収支予算及び事業予算を作成する。月間の予算対実績を絶えず比較検討し、必要な手続きを遅滞なく実行すること。

5) 月間決算書を分析、調査し、無駄の発生を抑制すること。キャッシュフローを絶えずチェックすること。収入及び収入を獲得する為の原価経費の発生に注意し、必要な手段を取ること。

6) 人事を把握し、採用、訓練、人材開発プラン等、必要な施策を立案、実行すること。

7) 組織をたえず監督し、必要に応じて改革・刷新していくこと。

8) 各委員会と協力し、委員会運営が好ましく円滑に運ぶようにすること。

9) 理事会ならびに、必要に応じて各委員会に出席すること。

10) マーケティングと会員との好ましい関係を保ち、クラブのサービスそして施設が会員及び入会希望者の希望に適するようにすること。

11) 新入会委員を歓迎し、また、現会員及びゲストに対し、常に彼らの目の届く場所に自分を置くこと。

12) 地域社会の行事に積極的に参加し、地域社会と絶えず好ましい関係の維持・継続に努めること。

13) クラブの行事を盛んにし、会員の参加向上に努めること。

14) クラブの購買政策を作成し、それが守られているかを監督すること。

15) 会長、理事及び委員長に対し、新しい施設の推薦・既存の施設の改善等、必要に応じて助言を与えること。

16) クラブのサービスが会員の満足を得られるよう、高い水準を創造し、維持・継続すること。

17) クラブ従業員の質が高く保たれるよう意識を高揚すること。及び従業員の服装・態度が好ましく保たれるよう努力すること。

18) 理事会、総会の準備及び記録を保存すること。

19) 各セクション責任者の職務がクラブの方針・政策に沿って実施されているかどうかを監督・助言する。また、各セクションの職員の勤務に注意を払い、必要とあらば各セクション責任者と協議し改善をはかること。

20) クラブ施設を維持・管理し、清潔が保たれるよう監督すること。

21) クラブの歴史記録、写真等の維持・管理を確実に果たすこと。そして総支配人は会長並びに理事に報告をし、オペレーション・マネージャー、経理責任者を直接管理、監督すること。

人・金・システムに何らかの問題が生じることを前提に、こうした21項目は作られました。よく22年間トップで頑張れたと自分でも思っています。

最後に、友人から教えられた「アメリカの心」という本の一説をみなさんにお送りしたいと思います。

「人はマネージされることを望まない。リードされたいのだ。世界のマネージャーなんて聞いたことがあるか? 世界のリーダー、それはある。教育界のリーダー。政界のリーダー。町内のリーダー。労働者のリーダー。ビジネスのリーダー。みんなリードする。マネージなどしない。……君の馬に聞いてごらん。馬を水飲み場までリードできても、馬に水を飲ませようとマネージすることはできない(後略)」

リーダーシップがなにより必要なのです。

 

こまつなおゆき「元気の作り方」講座 ●第2回

 

空気は選んで吸う・鼻からゆっくり吐く

 

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小松直行
筑波大卒、東大修士。資生堂研究員を経て95年より日本女子体育短期大学講師。著者に『身体教育の社会学(高文堂)』『暮らしのウェルネス・ウォーキング(求龍堂)』など。

 

空気も時には選んで吸いたいですね。普通の空気は20.93%の酸素とは0.03%の二酸化炭素、そして79.04%の窒素からできているわけですが、実際、そのほかにもいろんなものが混ざってます。湿気として感じるのは水蒸気、それから細かい塵や埃、化学物質など様々な微粒子、あるいは風邪などの病原菌、私の天敵、花粉も……。私たちはつねに、あまり意識しないで呼吸を繰り返しているわけですが、否応なしにいろんなものを吸いこんじゃってるわけです。

 

空気を吸い込みに行くなら森がいいですね。森の空気はさわやかで、とても気持ちがいい。秘密はご存じ「フィトンチッド(fitontsid)」。ロシア語で、植物が発散する揮発性の物質の総称で、フィトンは「植物」、チッドは「殺す」という意味です。1930年代に当時のソ連のB・トーキンという生態学者が発見した物質です。

昔から森の空気には細菌を殺す作用のあることが知られていました。最近の研究では、殺菌力だけでなく、逆にある種の細菌の活動を活発にしたり、人間をリラックスさせ、粘膜を健やかにして喘息などを抑えるといった作用のあることがわかっています。フィトンチッドは空気をきれいにし、人間を健やかにすることから「大気のビタミン」とも呼べるもの。ヒノキやヒバ、マツ、スギといった針葉樹から多く発散されていて、成分はおもにαピネン、βピネン、シネオール、カンフェンといったテルペン系の芳香性炭化水素。針葉樹林では、冬よりも夏のほうが多く、また夜よりも天気のいい日中により多く放出されています。

 

「大気のビタミン」と言えば海もおすすめです。すがすがしい潮風。景色もいいし、それだけでも海に来る理由は十分ですが、海辺の環境が私たちの健康にいい理由の一つは「マイナスイオン」。空気中に浮かんでいる水蒸気や埃や塵など様々な微粒子のうち電気を帯びているものをイオンと呼びますが、海辺の大気には、マイナスに帯電している微粒子、つまりマイナスイオンが多いのです。波がはじけて空気中に浮かんだ海水の小さな粒子はマイナスイオンになります。マイナスイオンは私たちのからだの働きを調節している自律神経のうち、副交感神経を刺激すると言われています。副交感神経は緊張を解きほぐしリラックスさせる神経ですから、私たちが海に来てマイナスイオンに包まれると、からだはゆったりとリラックスしてきて、イライラした気持ちも収まっていくというわけ。また、動物実験では、海辺の空気のようにマイナスイオンの富んだ空気の中に置かれた動物の方が、ウイルスなどの感染に対する抵抗力が高かったという報告もあります。さらに、騒音とか振動といったストレスに対しても抵抗力が大きいことがわかっています。

 

というわけで、すぐにも森や海に行ければ、それに越したことはないのですが、忙しくてそうも行かないからストレスが溜まってくるわけですよね。せめて「想像森林浴」や「想像マイナスイオン浴」でもいいのですが、もしあなたが、心を落ちつかせたい時、何かに集中したりリラックスしたいときに、ぜひ試していただきたいことがあります。「鼻からゆっくりと吐く」呼吸法です。

 

■息を吸うときには自然に肺の中に空気が入ってくるようにします。

■吐くときに、鼻からゆっくりと、鼻の奥の方が温かくなるのを感じながら吐き出していくようにします。

 

たったこれだけです。何回かやってみてください。できればゆったりと座ってやるのがいいです。仕事の合間や乗り物の中でのちょっとしたひとときに試してみてください。頭の中がスッと、クリアになるのがわかるはず。

たとえば、私たちが緊張したりイライラしたりすると、呼吸は浅くて早いものになりがちです。ときどき深呼吸しなくてはならなかったり、気がつくと、フゥーと大きな溜息をついていたり……なんてこと、ありますよね。ふだんは意識しないで行っている呼吸ですが、その時々の気持ちや精神状態が反映されやすいようです。

気持ちは身体に現れます。でも、その逆方向の働きかけもできるのです。つまり、ふだんは意識しないで身体にやらせているいることを、意識して行ってみると、逆に気持ちや心の状態を好ましい方向へ向かわせることができるわけです。

 

SSF・TOPICS

http://www.ssf.or.jp/

E-mail:info@ssf.or.jp

 

SSFスポーツフォーラム'97報告書

SSFでは、昨年12月に東京と大阪で開催したSSFスポーツフォーラム'97の報告書を作成しました。昨年のフォーラムでは「スポーツクラブをつくりましょう」をテーマに、欧米型のスポーツクラブとして注目を集める“横浜カントリー&アスレチッククラブ”(YC&AC)の紹介を行い、それを受け、元有名アスリートや学識者・専門家が「日本にスポーツクラブができるのか」というテーマでパネルディスカッションをしました。2時間のフォーラムでしたが、パネリストのそれぞれの立場からの主張や意見を存分に述べていただき、スポーツクラブづくりに対する問題提起を行うことができました。この報告書は、フォーラムの内容をくまなくまとめたうえ、YC&ACの詳細な概要、フォーラム参加者の意見なども掲載しており、スポーツクラブづくりのための参考にしていただけると思います。ご希望の方は、SSF業務課までご連絡ください。

 

3,000人を対象にスポーツライフ調査を実施

6月に「スポーツライフに関する調査1998」を全国で一斉に実施しました。今回は調査対象をこれまでの2,000人から3,000人に増やし、調査項目もスポーツ人口の量的・質的把握はもちろん、新たに促進要因やスポーツボランティアの項目を加え、より充実した内容になりました。調査結果の速報は10月10日頃、調査報告書は年内刊行の予定です。ご期待ください。速報資料をご希望の方はSSF調査研究課までご連絡を。

 

 

 

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